いつも興味深いインタビューを載せてくれる雑誌「milk」から、3月復活節に公開の馮徳倫(スティーヴン・フォン)監督《精武家庭》のポスターをデザインしたGeoff Tsuiのインタビューを拾ってみた。
・ 《精武家庭》について
milk(以下M):《精武家庭》のポスターについて話していただけますか?
Geoff Tsui(以下G):全ては会議の時のオフィスの机の上の煙草から始まったんです。馮徳倫はその煙草を見て、色やデザインをシンプルなものにしたいと言ったのです。例えば、煙草のパッケージデザインは色は赤や黒や白で、円や線のデザインで出来ていますよね、そんな感じです。インパクトがありますから。
M:あなたの作品を見ると、いままでの香港映画のポスターとはちょっと違った感じがします。
G:これは僕の力ではなく、馮徳倫が多くの意見を言ってくれたからです。彼自身、デザインについて知識があります。色や配置についても分かっています。さらに彼の要求は普通に見られるものとは違っていたのです。また会議では、陳自強(ウイリー・チャン)さんも、たくさんの面白いアイデアをくれ、すべてスムーズに進みました。もしポスターの出来がすべて僕の1人の力だと言ったら、それは褒めすぎですよ。
・成龍のアイディアについて
M:何故、成龍(ジャッキー・チェン)と一緒に仕事をする事になったのですか?
G:それはある偶然からです。大哥が僕のポートフォリオ(作品)を見て、気に入ってくれ、話をする機会に恵まれました。話し合いの中で、成龍と話が合ったのです。特にお互い香港のデザインについての意見が一致したのです。
M:大哥は、香港デザインをどう見ているのですか。
G:大哥は香港デザインの支持者といえるでしょう。彼はよい作品とは、その質、発想はもちろんですが、実用性があることが必要だと思っています。使い勝手がいい、つまり「モノは使われる」んだと、しかし見た目はシンプルなものがいいと思っているのです。
M:それはたいへん挑戦的な仕事ですね。
G:大哥との仕事では、思ってもみない挑戦になりました。彼はくるくると考えが変わるのです。デザイナーが新しいものを作るということは、常に挑戦なわけです。大哥が香港へ戻ってくる度に、海外に居るときに考えた、本当に様々な考えを僕に言ってくれます。その中にいくつかは思いもよらぬもので、それは挑戦しがいのあるものでした。また彼は自分の考えを次々と角度を変えて話したりしました。
・自分について
M:あなたはカナダでプロダクトデザインを勉強し、香港へ戻って映画のオフィシャルサイトのデザインをしたあと、映画のプロモーションにかかわるようになり、現在は主に映画のポスターデザインなどを担当しているのですが、この中で自分ではどれが一番好きな仕事ですか?
G:僕は、自分を何か1つの枠で縛りたくないと思っています。それは異なるデザインは、異なるメディアなのです。つまりメディアによって様々なデザイン方法があるということです。
M:最後に好きなアーティストを教えて下さい。
G:3つのカテゴリーにわけられるのですが、建築では、ノーマン・フォスター*1が好きです。僕が建築を学ぼうと思ったのは、匯豊銀行がきっかけですから。大学でも彼について研究していました。彼は本当に頭のいい建築家だと思います。匯豊銀行は自然光を光源としていて、透明なガラスで出来た外壁からできる限り光を取り込もうとしています。また空間を把握する力には素晴らしいものがあります。
プロダクト・デザインで、好きなのはカリム・ラシッド*2。彼の出現は近年のデザイン革命大いに影響を与えました。彼のすごいところは、彼はあらゆる物質の特性を熟知していて、その特性を生かしていけるというところです。
グラフィック・デザインでは、マイク・ヨン*3。彼は伝統的な法則をうち破り、新しいデザインスタイルを生み出しました。大胆というのも彼のデザインの特徴です。Geoff Tsui profile
90年代、カナダの大学でデザイン、建築を勉強し、90年代後半香港へ戻る。寰亞電影に入り多くの映画にかかわる。その後スターTVを経て、自らの事務所を設立。かかわった作品は
- 《天脈傳奇》楊紫瓊(ミシェル・ヨー)主演 オフィシャルサイト、ポスター
- 《飛鷹》楊紫瓊、任賢齊(リッチー・レン) 馬楚成(ジングル・マー):監督、ポスター
- 《大城成事》王菲(フェイ・ウォン)、黎明(レオン・ライ) 葉偉信(ウイルソン・イップ):監督 ポスター
- 《大你愛美麗》陳奕迅(イーソン・チャン)、呉彦祖(ダニエル・ウー)、馮徳倫:監督 ポスター
- 《新警察故事》成龍、謝霆鋒(ニコラス・ツェ)、呉彦祖 陳木勝(ベニー・チャン):監督 ポスター
- 《精武家庭》ポスター
- 成龍の会社JCEのロゴ。成龍の九龍塘の事務所の外壁やイラスト。
- 《警察故事》DVDボックスセットのパッケージ。
- 《秋天的童話》DVD特装版パッケージ など
by「milk」186号
「milk」は、毎度、目の付け所が日本の雑誌っぽい。日本のカルチャー紹介もかなりの部分を占めるし、映画の紹介に熱心でもある。編集部が対象にしている年齢からはかけ離れていると思うのだが、毎回どうしても買ってしまう(爆)。
《大城成事》も目を引くポスターだったし、《大你愛美麗》も格好良かった。同じ人のデザインだったとは。前にココで書いた《2046》のポスターをデザインした人(id:hkcl:20041017#p1)の時にも思ったが 、馮徳倫も黎明も成龍もいい目を持っているってことだろう。それにくらべ、コンサートのポスターやCDのポスターがいまいちなのはやはり宣伝費の違いか(笑)。