石琪先生の10本

  1. 功夫カンフー・ハッスル)》周星馳チャウ・シンチー)が窮地を救う。再び香港功夫映画の神話が作られ、アクション喜劇の伝統を再構築した。古い上海と古い香港の2つの都市の源を漫画的手法を用い、貧民窟から超現実の異能を作り出した。全編懐古調で新しさはないが、そのスタイルは強烈。映像とアクションは出色。昨年の香港映画の最優秀作品。
  2. 《旺角黒夜》爾冬陞(イー・トンシン/デレク・イー)が黒社会と警察、大陸からやって来た殺し屋と娼妓を豊富な映画的感覚で纏めた佳作。惜しむらくは悲劇的過ぎるところ。
  3. 《A1頭條》陳嘉上(ゴードン・チャン)は新聞業界の疑惑追跡を警察との対決として描き、推理と微妙に変化する感覚は、香港映画としては珍しいもの。欠点は終わっていないような終わり方。
  4. 《2046》王家衛(ウォン・カーワイ)は再び懐古趣味をなぞる。優れた点は、20世紀と60年代をさまよう文人と女性たちが、独特の風情を作り出していること。
  5. 《桃色》楊凡(ヨン・ファン)は自らほしいままに振る舞い、濃厚な装飾を施す。不可思議なドラマと妖艶な人間の話は舌足らずだが、異色の作品。女性の同性愛を描いた麥婉欣(ヤンヤン・マック)のインディペンデント系小品《蝴蝶》とは対照的と言える。
  6. 《新警察故事》監督・陳木勝(ベニー・チャン)は成龍ジャッキー・チェン)を使って再び颯爽と格好良く。「新人類」謝霆鋒(ニコラス・ツェ)、呉彦祖ダニエル・ウー)、蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)らの演技も好かった。しかし全体としていは新しさに欠ける。
  7. 《20 30 40》張艾嘉(シルビア・チャン)が台北の3つの異なる年齢の女性たちの悲喜劇を描く。内容は豊富で、水準を保っている。
  8. 《死亡写真》新しい女性のスリラー映画。監督・彭順(オキサイド・パン)と2Rの姉妹は見るべきところがある。
  9. 張藝謀(チャン・イーモウ)《十面埋伏(LOVERS)》
  10. 馮小剛(フォン・シャオガン)《天下無賊》この2つの作品は、香港・台湾が援助して出来た大陸映画と陰口をたたかれる。ただし大陸の商業映画も武術を多用することがはっきり分かった作品。by 2005.1.3「明報」

DVD買いに、これを参考にするのもいいかと。私的には、《十面埋伏》と《天下無賊》は大陸映画、《20 30 40》は台湾映画だと思っている。
《十面埋伏》と《天下無賊》、どちらにも劉徳華アンディ・ラウ)が噛んでいると言うことに注目しなくてはならない。劉徳華は、香港からなんとか大陸へ食い込もうと必死。香港の劉徳華はすでに限界(やるべきことはすべてやった)、次なる目標は中国の劉徳華。そうせざるを得ないところが劉徳華の悲劇なのですけれど。スターは演技が下手と言われ、かなり頭に来たようで、「おれのどこが下手なんだ」と。金像奨も金馬奨も取って、次は大陸の映画賞を狙う。ホントは梁朝偉のように国際的は奨が欲しいのだろうけれど。「演技が下手でどこが悪い。それでも俺は魅力的だ」と言えないところが劉徳華の悲劇。劉徳華、歌でも踊りでも演技でも実はかなり努力している。努力出来るのも才能のうちだが、みんなの望む劉徳華、ファンの望む劉徳華、いやホントは自分の望む劉徳華を演じ続けなければならない悲劇。劉徳華はどこへいくのでしょうか。