痩身

黄秋生(アンソニー・ウォン)、鄧萃雯(ダン・ソイマン)、應采兒(チェリー・イン)、田蕊妮(クリスタル・ティン)、黄浩然(レイモンド・ウォン) 
麥子善(マルコ・マック):監督


刑事の徳(黄秋生)の妻(鄧萃雯)は、かつて有能な警察官だったが、徳と結婚してからは、夫を支える妻。徳と、コンビの抜(黄浩然)の2人は、ある日、奇妙な殺人事件に巡り会う。死体の人物はダイエットスタジオに通っていたタレントだったが、死因は餓死。ガリガリにヤセ細っていた。さらに口の中から70ポンドと書かれた紙が見つかった。彼女が通っていたダイエットスタジオに何かあるのではとにらんだ矢先、次なる犠牲者が出た。徳の妻は、犯人の心理を推測し、徳の捜査を助けていくが・・。


こう書くと、猟奇殺人を解明するスリラー映画だが、サービス精神旺盛な王晶(プロデューサー)は、そう簡単にスリラーにはしてくれない。芸達者の夫婦役(黄秋生と鄧萃雯)に少しばかりのコメディを受け持たせる。これでスリラーの緊張が時々ぶった切られるのだが、実はこれが程良いアクセントになっているのかもしれない。
監督の麥子善は、王晶とは《黒白森林》でも組んでいるが、元々は編集の人で、他に陳小春(チャン・シウチョン)と譚耀文(タム・イウマン)の《黒道風雲》、王敏徳(マイケル・ウォン)の《行規》、呉彦祖ダニエル・ウー)の《知法犯法》などを撮っている。こ洒落ようとする傾向が強い。いくらこ洒落れさせても、役者は香港人で写る街は香港なのだから、限界がある。さらに全編緊張の糸を張っていくには、やはりそれそうとうの脚本でなければならない。上記のどれもがそのあたり力不足なのだ。
ところが《痩身》は、黄秋生・ 鄧萃雯夫婦のコメディタッチを間に挟み込んで、緊張の糸を引っ張ってはゆるめ、また引っ張りという工夫をした。これが意外にいい効果で、なんとか最後までこっちの気をひっぱってくれ見ていられた。初めから終わりまで糸を引っ張っていくことも可能だけど、それは見ている方がかなりキツイ。敢えて無理をしなかったことがよかったのか、それとも王晶のサービスによる怪我の巧妙だろうか。あとは、大陸から来る刑事と、應采兒につきまとう男をもう少しうまくいかしてくれたら、もっと面白くなったのでは。しかし考えていたよりは、遙かに好い出来だったと思う。なお昨年末、旺角で見たロケ(id:hkcl:20041222) はこの映画のモノだった。
2005.3.3@總統戲院


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