影帝には成りたくない

・いまでも謙虚影帝はジャージがお似合い(汗)
方中信(アレックス・フォン)は俳優になって18年、知名度がないわけではないが、地味な態度で、誰もが認める代表作はなく、彼の芸能生活はまだ確立されたとは言えない。「第5回華語電影傳媒大奨」の主演男優賞を受賞して以来、もう地味な生活は出来ない。テレビや新聞や雑誌が次々とインタビューを申し込み、街では以前は「方中信」と呼ばれたが、いまは「影帝」と呼ばれているだろう。彼が以前と同じようにしたいと願っても、いま彼が出来るのは、いまの状況に自分を慣らして、以前の生活にできる限り戻ろうとすることだけだ。
中国影帝(中国の映画スター)になった方中信はいまだ謙虚で、「主役をしても他の人をサポートすることは出来るし、俳優は監督の指示を頼りにしている。昨年《旺角黒夜》を撮影している時には、映画《爆裂都市》とドラマ《争分奪秒》を同時に撮影していた。しかし出来上がってみると、その違いは大きかった。監督にすべてを任せた演出と、細かく描きこまれた脚本によってコントロールされた作品は、その効果が違うことが明らかだった。俳優が出演作を選ぶのは簡単だ。しかし僕が影帝になれたのは、プロデューサー、監督、脚本、俳優、撮影、照明などすべての人のタイミングが合ったということだ。5年早かったら僕は経験も豊富ではなかっただろうから、必ずしも取れたとは限らないだろう」。
受賞後、方中信はたくさんのオファーがあるとは思っていない。しかし彼はすでに以前のようになんでも受けることはしないという。「いま多くの人が僕を認めてくれたといえるだろう。製作費の少ないものが悪いというのではない。しかし質の高いものを撮りたいと思っている」。影帝になって仕事の上では多くの制限を作るのだろうか。「こうすることがいいことなのか悪いことなのか分からない。しかし質の高いものは、自分にとってもいいことだ。多分収入は少なくなるだろう、しかし質のいい作品はいまの僕の年齢には必要なことだ。以前からそう思っている。いまはただ、自分がこうやっていくことへの言い訳にすぎないのだけれどね」。
・ディスニーランドからご招待
方中信と彼女・莫可欣はつき合ってすでに10年になる。いつ結婚するのかと何度となく聞かれているし、影帝になれば、全世界が彼に結婚を迫るだろう。さらにディズニーランドでさえ、彼らにディズニー初めての結婚式をして欲しいと言ってきていると聞く。彼は笑ってミッキーと一緒の結婚は面白いと言う。しかし8、9月ごろいまでは仕事がすでに決まってしまっていて、まったく準備する時間がないという。彼はあまり関心が無い様子で、全ては彼女に任せるという。
「仕事が先。この業界は退職金はないし、何の保障もない。何かあったらどうやって過ごせばいいのか」。方中信はたくさんの映画に出演したが、94年後半から停滞期に入った。その後、ほぼ2年間収入はなく、仕事もなく、映画、テレビは彼を必要としなかった。毎日家に居た。しかし幸いな事にあきらめなかった。ようやく趙崇基(ディレク・チュウ)が彼をどん底から救ってくれ、テレビ映画を撮影し、その後仕事は次々とやってきた。「その時から大切にするということを学んだ。以前は多くのどうでもいい作品を撮ってきた。しかし今の大切にすると言う気持ちは以前とは違う。人生経験も有る程度経てきたから、今の生活が好きだし、逃げ隠れもしないし、他人に見られることもかまわないと思っている。撮影が終われば、1人の普通の市民だ。仕事は少しのお金を稼ぐためのものに過ぎない。朝から晩まで俳優というわけじゃない」。
・2年間仕事がなかった
10年にわたる恋愛には大きな波風はなかった。方中信は生活圏は狭いし、仕事も友人もほとんど同じ顔ぶれだと言う。しかし重要な事は、自分の心持ちだ。「18年。僕も変わった。人を笑わせることも知っている。自分はアイドルじゃないし、美男子タイプじゃない」。彼が美男子ではないというと誰も同意しないだろうし、現在仕事が上向きの時、方中信の彼女としてはプレッシャーは大きいことだろう。彼は「彼女はまったく気にしてない。生活の細かい所まで、僕がどんなかは好く分かっている。ここ数年は大人しくしているし、淡々としている。以前とは違うし、小さな事で満足出来る。簡単なことで嬉しくなる。たとえば、前に彼女は300ドルのゲーム機をくれたが、それで僕はすでにとても嬉しかったよ」。
・女性はダイヤモンドと見かけ
最近、方中信と以前の彼女・陳淑蘭が飼っていた愛犬が歳を取り安楽死をさせることになり、彼は泣きはらした。方中信はその気持ちの優しさを称賛されたが、莫可欣の心の広さは誰も称えなかった。彼は「もし彼女が好くないなら、こんなに長くつき合ってないよ」と話す。しかしつき合って10年、結婚を決めずにいることは、どうなのか?「引っ張ってるわけじゃない。彼女への対しかたはこんな感じだ。彼女が買いたいものがあれば、どんなものでも買ってあげている。彼女が口にしなくても気にしている。女性はダイヤモンドと見かけでしょ。だからパパラッチは僕を追いかける必要はない。僕は追いかける対象にならないよ」。
・閉所恐怖症
結婚はしていない方中信だが、すでに主夫と変わりはない。仕事のない日は、12時には眠り、朝8時には起き、朝食を食べ運動をし、魚に餌をやり花に水をやる。彼は閉所恐怖症だと笑う。どんどん騒がしいところと人が多いのが恐くなった。自分の空間がなくなるのが恐いので、日曜日には絶対に出かけないという。「先週、イースター休みだということを忘れて、車で旺角へ魚を買いに出かけた。絶えられなかった。たった100メートルの道路を進むのに15分もかかってしまった。先日は父と母を灣仔まで車で送っていった。タクシーやミニバスが客待ちで泊まっていて、車は渋滞だった。尖沙咀だって回り道しなくてはならないし。普段は本当に行きたくない場所だ」。
香港の生活環境はこのようなもので、逃げようと思っても逃げられない。しかしリタイヤしたら、香港に居る必要はない。「そう。島に住もうかと考えたことがある。しかしそんなに急がなくてもいい。お金の問題じゃなく、健康状態を見て、さらに10数年から20年はまだ仕事が出来ると思ので、60歳ごろになったらリタイヤしようと思っている」。by 2005.4.3「成報」

受賞はやはりタイミングと運が大きく関係するだろう。「香港電影金像奨」は、業界内の投票だけで決められるが、「華語電影傳媒大奨」は討論で決めるているため、受賞者に大きな違いがある。討論の結果というのは、ちょっと嬉しい。まさに長年の努力が実り、みんなに認められたという事だ。これで大陸の仕事が増えると寂しい気はするのだが。ファンとしては獲れるものは何でも獲って欲しいが、欲のなさ(いやホントは欲はあると思うが)というか、有る程度のあきらめというのか、それがもどかしいところではある。ただそれがいいところでもあるから、しょうがない。