BTに初の起訴か

香港政府と映画界はインターネット上での版権侵害者に対して宣戦布告した。海関(税関)は昨日、全世界で初めて「Bit Torrent」を使用した版権侵害に対して起訴するつもりがあると話した。映画業界人で組織された電影工業應変小組(映画工業小委員会)は、あらゆるインターネットを調査した結果、香港映画《精武家庭》が上映開始後1か月足らずの間に、全世界で100万回以上の不法ダウンロードが行われた事実が分かったと発表した。これは香港での観客数の3倍以上になる。《見鬼10》についても版権侵害は著しかった。これにより昨年業界は4億香港ドルの損失を被ったと推測される。小委員会は、すでに香港の6000名の版権侵害者を調べ出しており、そのうち100名に対して警告状を出した。さらに続けて版権を侵害すれば、さらに一歩進めて版権侵害者1人につき、20万香港ドルを超える賠償額の民事訴訟を起こすことになる。
小委員会の陳嘉上(ゴードン・チャン)は、業界は知的所有権保護の必要があり、政府だけに任せてはいられないという。小委員会は、I.T.探偵を組織し、先月(3月)24日から上映の香港映画《精武家庭》と《見鬼10》をインターネット上で監視した。結果、3月下旬から一昨日(4月27日)までの期間に、《精武家庭》は全世界で100万回以上の不法ダウンロードが行われたことが分かった。香港は全世界の4%を占める計算で、香港内だけで4万回が行われ、1回のダウンロードで4人が見る計算だと、16万人が不法ダウンロードの視聴者ということになる。
陳嘉上は、今週の月曜日までに22万人近い観客が《精武家庭》を鑑賞したと推測されるが、そのうち1.4人の観客に対して1人が不法ダウンロードでこの映画を見た計算になり、状況は究めて深刻だという。香港映画の興行収入は、これにより少なく見積もっても3億から4億の損失になる。《見鬼10》については、先週になって初めてネット上にダウロードの元が出来たが、11日からダウンロードの回数は8万回を越えている。この映画は今月(4月)14日までの興行成績はわずか700万香港ドルだった。本来なら映画館で見るべき観客はすでに不法に見てしまったことになる。
・使用者の資料捜査を法廷に願い出る
香港影業協会によると、小委員会は使用者の個人データが分からないため、プロバイダー提供業者の協力を得て、昨日からそのうちの100名の不法ダウンロード使用者に対して、e-mailまたは書留で、即刻版権侵害行為を中止するようにという警告状を送っているという。これは警告とともに、使用者を特定出来るという証明の意味も含んでいる。
もし版権侵害が続く場合は、小委員会は民事訴訟を起こし、またそれはすでに警告書を受け取った100名以外にも適用するつもりだ。またプロバイダー業者が個人資料を提供したことで、プライバシー侵害になるのではという点については、小委員会はすでに法廷に申請し、プロバイダー業者には版権新会社の個人データを提供するようにという許可を取っている。それにより正式に民事訴訟が出来ることになる。小委員会はこの為に50万香港ドルの費用を用意しているという。
・夏休みの香港映画はわずか1作
《精武家庭》の監督・馮徳倫スティーヴン・フォン)は、100万の版権侵害、この数字は驚きに値するという。映画を見るという行為は、一種の群衆活動、不法ダウロード後に小さいパソコンの画面で見るものではないともいう。《見鬼10》のプロデューサー・鄭丹瑞(チェン・ダンソイ)は、版権侵害の状況は、映画への投資額の減る原因にもなるという。
陳嘉上は、BTによる侵害行為は香港映画に深刻な打撃を与え、夏休み上映の香港映画は《頭文字D》わずか1作だけ、さらに香港映画の前途は不透明であるという。監督の張堅庭(アルフレッド・チョン)は、若者たちはBTを使い映画をダウンロード、さらにネット上で討論するのが流行っており、それはすでに一種のトレンドとなっている。「いまは海賊版を買う手間も必要ない」、これは必ず投資者の心理に影響があると話す。
政府と映画業界は長年、手を組み、ネット上の版権侵害行為に対策をとってきた。しかしネット利用者は、BTを使って不法ダウンロードを続けている。ある映画関係者は、香港人はより安直な方法を好む。「人がやっているなら自分もしなければ損をする」と考え、香港人のモラルは外国人より低いという。
アメリカ映画協会中華圏運営総監督・何偉雄氏は、香港の知識産権(知的所有権)署は、より積極的に市民教育を推し進め、海賊版不買と不法ダウンロード禁止を呼びかけるべきだという。しかし香港人はモラルが極めて低いため、知的所有権保護の強い意志がなければ、この状況は変わらない。新しい出資者は香港に価値を見出さなくなり、ソフト開発やその他、創造的な産業の発展に大きな影響を与え、香港の経済力は弱くなっていくだろうと話した。by 2005.4.28「東方日報」