怪物

《怪物》
林嘉欣(カレーナ・ラム/カリーナ・ラム)、舒淇(シュウ・ケイ/スー・チー)、方中信(アレックス・フォン)、林雪(ラム・シュ) 鄭保瑞(チェン・ポウソイ):監督


舒淇方中信の夫婦には子路という男の子がいる。一家3人は新しいマンションを買い引っ越してきた。引っ越し当日、子路はふとしたはずみでエレベーターのドアがしまり、閉じ込められてしまった。子供を捜して走り回る舒淇は、無気味な物体を見た。
ある日、マンション高みから突然、子路が姿を消してしまった。ビラを作り、夫婦は必死で子供を捜しているとき、駐車場の排気孔から子路の泣き声が聞こえてきた。夫は泣き声のするゴミ捨て場へ向かう。もう少しで子供に手が届くという刹那、夫は怪しい物体に叩きのめされ、意識不明に。警察が出動、マンション中を捜索するが、やはり子供は見つからない。子供はマンションに住み着く「怪物」にさらわれていると妻は主張するのだが、警察はもう取り合ってくれない。


怪物を演じるのは林嘉欣。これはもう最初からネタばれで、特殊メイクも公開されていて、驚くにはあたいしない。彼女が何故そうなったのかという理由が劇中で語られていくのだが、正気を失った林嘉欣が上手いといってはたしかに上手いのだが、感動するというわけでもなく。舒淇の少々自閉的な母親も、自閉的と舒淇はぴったりだが、母と舒淇がどうも似つかわしく無く、方中信舒淇の夫婦もいまひとつリアリティがない(笑)。
方中信は、わりと早く、画面からいなくなる(笑)。可もなし不可もなし。子役、抜群に上手い、上手すぎ。こんな映画を撮ったらトラウマになりそうだが、自己コントロールがきちっとできる子らしく、演技と現実をはっきり区別できているという。


この映画、《怪物》などというタイトルで、いかにもホラー臭いのだが、その実、ホラーでも猟奇でもなく、子供を探し求める母の愛は果てしなく深いというお話。ん〜でもなんか足りない。無理矢理観客を泣かせ納得させる必要はないだろうが、それ相応の感動を与えて欲しいと思うのが人情というもの、しかしそれがどうも得られない。怪物メイクの林嘉欣登場シーンでは笑う観客もいるほどで、実はコメディかと言っている人もいたりして。林嘉欣の犠牲もいまひとつ報われていないような気がする。それならいっそホントにホラーでも十分母の愛は描けたのでは。初日、90%以上の入りだが、多くの観客が期待したものは何だったのか、ひどく知りたい。2005.10.27@旺角百老匯


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