情賊

謝賢、嘉玲、司馬華龍 
望雲:監督 1958年 モノクロ


姜維森(謝賢)は、泥棒。盗むのは女性の心と宝石。ところが宝石を盗まれた女性たちはみな、姜維森はいい人、宝石なんて盗んだりしないという。彼のしっぽをつかもうとやっきな刑事(司馬華龍)は、どうしてこうも女性たちが彼をかばうのか理解できない。
姜維森があるパーティーにあらわれるという情報を掴んだ刑事は、パーティー会場で姜維森を待ち構え、勇気があるなら、ここで宝石を盗んでみろと挑発する。刑事の裏をかいて宝石を盗み、タイへ行こうとする姜維森を刑事が空港で捕まえるが、これまた刑事の裏をかいて、まんまとタイへ。ところが刑事がタイまでしつこく追いかけてきた。
タイでも、美しい宝石を身につけた神秘的な女性(嘉玲)に目をつけた姜維森だったが、どうやら女性は本当に姜維森を好きになってしまった。そして姜維森も自分の心の変化に気がついた・・・。


タイトルの「情賊」、日本語に訳せはば「ハート泥棒」とでもいうのか。謝賢と刑事の駆け引きが軽妙で面白い。次元や五衛門や不二子はいないけど、姜維森と刑事の関係は《ルパン3世》のルパンと銭形警部のような関係といった方がいいかも(笑)。洒落て楽しい映画だった。2006.5.1@「光藝的都市風華」香港電影資料館
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今日、この映画、電影資料館はほぼ満席だった。
電影資料館は、かしこばって、「昔の映画を見に来ました」という客はあまり多く無いのではと思っている。ここでは週末に古い映画を上映していると知っている人が、ぷらっとやってきて、上映作品が面白そうならチケットを買う。時々、おばあちゃんにつれられてきた小学生もいる。たぶん、当初、資料館が考えた客層と違うのではと思うが、私はそんな気軽な雰囲気が、とっても好きだ。
特に今日の映画は、深刻な内容ではなく(ちょっと深刻なところも実はある)、楽しい映画。台詞に大笑い、テレビを見ているように画面に向かって反応するオヤジさえいた。昔の町並みやマカオ行き船乗り場が写ると、みな、いっせいに何か話しだす。今日の観客はみな、なかなかヤル(笑)。
日本なら、怒る人がいるかもしれない。でも本当は映画はこうやって見るものではないかと思う。おかしくても笑わず、だまって銀幕を凝視している方が、変じゃないかと思う。画面の台詞で笑って、オヤジの反応にもみんなで笑って、映画館の観客がひとつになっているような感覚。かなり長い事、こんな楽しい感覚を忘れていたかもしれない。


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