化身情人

《化身情人》南紅、張英才、李香琴、兪明、林彬、鄭君綿、雷鳴 
楚原:監督 1965年 モノクロ DVD


沢山の絵を抱えて男(張英才)がバスに乗り込む。切符を買おうとするがお金が見つからない。そこをある女性(南紅)が助けてくれた。男の名前は畢加縄、売れない画家。友人の詩人・李泰克と画家・[登β]陣先と3人で暮らしているが、3人合わせても今日の晩御飯にも困る生活だった。しかし女性が気になる畢加縄は、友人2人のズボンを質に入れ、彼女が降りたバス停で待ち伏せ、借りた1セントを還して女性と親しくなった。
女性は謝美珍といい、姉夫婦と一緒に生活している。姉(李香琴)は、彼女をお金持ちに嫁がせて、そのおこぼれをと考えている。
絵が売れそうだと期待を持った畢加縄だったが、その夢を打ち砕かれて、収入は一切なし。彼等は一計を案じる。画家は亡くなってから名をなすもの。畢加縄は自殺をよそおうことに。すると一夜にして彼の名は知れ渡り、絵の値段は高騰した。
謝美珍は畢加縄の死を知って、自分が本当に思う人は畢加縄だと話す。それを知った畢加縄だが、死人が出て行くわけには行かない。そこで、畢加縄の幼馴染みの医者と偽って、髭を付けスーツを着て謝美珍の前に現われたのだが・・・・。


もちろんコメディ。馬鹿らしかったが面白かった。それには愚直な画家を演じる張英才、口の上手い画家・鄭君綿、詩人の林彬の3人の変型「難兄難弟」や、謝美珍を追い掛ける医者に扮した張英才と金持ちのボンボンの雷鳴の追女仔合戦が、ありがちだが、分かりやすいから。そしてマドンナ役の南紅は、お金に目をくらますことなく、自らの愛する人をいつまでも思っているという心優しい、これまた分かりやすい役だから。単純なことは重要だ。
なお、畢加縄、広東語の読みはパッ・カーセン、つまり畢加索(ピカソ)をもじっているのだろう。また、姉の夫の名は畢準(「不准」と同じ音、意味は許可しない)と畢加縄の友人の[登β]陣先(「等(一)陣先」と同じ音、意味は、まあちょっと待ってください)の2人が名前を名乗る場面で「待ってください」「許可しないぞ」と言い争い、取っ組み合い寸前になるという古典的に馬鹿馬鹿しい場面もあり。また医者に扮した張英才の姓は「賈」で劇中「賈医生」と呼ばれている。この発音は「がーいーさん」で偽医者と言う意味の「假医生」と同じ発音。


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