龍虎門(ドラゴン・タイガー・ゲート)

《龍虎門》甄子丹(ドニー・イェン)、謝霆鋒(ニコラス・ツェ)、余文樂ショーン・ユー)、董潔(ドン・ジエ)、李小冉(リー・シャオラン)、元華(ユン・ワー)、陳観泰(チェン・カンタイ)、行宇 
葉偉信(ウイルソン・イップ):監督


「龍虎門」は黄玉郎(ウォン・ヨックロン)の漫画が原作。この漫画、1970年代から出版(香港ではひとつの物語が1冊の小冊子で売られている)が始まり現在も続いているという大長篇漫画。その辺の香港人に聞いたら(笑)、「ストーリーは警察ものと同じだよ」というのだが、果たしてどうなのかは、読んでいないので不明。しかし映画は、その長いストーリーとは別もので、骨組みと人物設定を借りたと考えた方がいいのかもしれないが、そのあたりも現時点では不明。実は8月2日に城市大学で、黄玉郎、プロデューサーの黄百鳴(レイモンド・ウォン)、監督の葉偉信(ウィルソン・イップ)らが座談会を開くので、聞きに行く予定だ。漫画と映画の関係については、この座談会以降にもう少し、何か書けるのではと思っている。
そんなわけで、漫画との関係はあまり考えず、単にひとつの映画として見た。


物語は、「龍虎門」という名の功夫道場(自らを悪から守るため、心身を鍛える場所)の後継者で子供のときに生き別れた兄弟(甄子丹と謝霆鋒)が、実は敵同士になっているが、紆余曲折を経て、兄弟は理解しあい力を合わせ、さらに彼らに協力する「龍虎門」の信奉者(余文樂)と共に、悪と戦って行く話し。


映画に登場する場所は、これは香港でもどこでもない架空の世界が出来上がっている。時に香港のようで、時に東京のようで、アジアの架空の都市だ。遠景は、全面CGで加工してある。この奇妙な風景と実際のセット(それもさびた金属の香りがいっぱいするような作り)の組みあわせで、不思議な雰囲気を醸し出してる。
敵は「火雲邪神」で、これがとてつもなく強い。仮面を被っているため、顔は不明。
弟の王小虎(謝霆鋒)、最初「龍虎門」に闘いを挑んで打ちのめされる石黒龍余文樂)は、まず敵にこてんぱんにやっつけられて、その後、女性(董潔)の力を借り救われ、修行を積んで強くなる。兄の王小龍(甄子丹)は、かつて助けた女性(李小冉)との曖昧な感情をうまく処理できず、そのうち彼女に陥れられ、やはり身体的にダメージを受けるが、最後には彼女が自らを犠牲にして小龍を助ける。つまりひとつには、主人公は一度、挫折なりダメージなりを味わい、それを克服し、強くなり敵に立ち向かうという英雄もののストーリー、もうひとつ男のために女は犠牲を払うという、実に古臭い構図が登場しており、話しとしては、ある意味オーソドックス。
巡りあった兄弟は、最初はそれぞれの立場の違いから相容れないが、最後には「龍虎門」の教えに則り、2人は正しい道を歩んでゆくことになる。これもかなりオーソドックスで、善悪もはっきりしている。


ただし、悪(火雲邪神)は、何の目的で悪なのか分らなかったのだが、これはもう悪と決められているということか?(それとも説明を見落としたか?)
特徴的なのは、兄弟の関係や、甄子丹と李小冉の関係は、すべて子供の時にまで遡るため、子役を使って見せているところ。これがこの映画の中で最も葉偉信らしい場面だと思う。こういった回想場面がところどころに挿入され、アクセントになっているが、もしかしたら、アクションだけを見たい観客には、これは多いに不満かもしれない。
アクションは、CG、ワイヤー遣い放題で迫力あり。かなり痛そう。カメラワーク、特に真上からのショット、画面を分割するなど、けれんみたっぷりだが、これはまったく気にならないし、むしろ面白いと感じた。それは、セットと遠景のCGの組み合わせや、不思議な色使いなどで出来上がった架空の空間に、うまく合っていたからだと思う。


それから、甄子丹はいろいろな芝居をさせられている。アクションだけでなく、台詞や表情も。そしてそれに応えようと、かなり頑張っている。役者としてもひとつ成長したのでは?? 謝霆鋒よりもかなり魅力的に見える。
ただ、全員顔にかかったむさ苦しい髪の毛はなんとかならないのかと思うが、これがないと替身が分かってしまうからしょうがないのかもしれない(笑)。
全体としては、やはり葉偉信色はかなり薄いが、それなりに面白かったので、もう1度は見るつもり。第1回目の感想はこんなところ。2006.7.28@旺角百老匯
なお、7月27日(木)は一部の映画館で夜2回のみの先行上映。正式な上映は28日(金)から。この日、旺角百老匯、夜9時の回、ほぼ満席(98%ぐらい)。


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