杜琪峰@蘋果日報

亞士厘道

TVBに苦言
杜琪峰(ジョニー・トー)は、次世代の製作者と俳優をつくり出すことが重要だと思っている。これまで多くのスターたちが無線電視から出てきた。無線については「このテレビ王国では、以前は映画界の半分のスターや監督が、無線が応援して世にでていた。たとえば、周潤發(チョウ・ユンファ)、梁朝偉トニー・レオン)、劉徳華アンディ・ラウ)、徐克(ツイ・ハーク)、林嶺東(リンゴ・ラム)、許鞍華(アン・ホイ)、王家衛(ウォン・カーワイ)などだ。ここ数年1人もそういう人はいない。いまTVBは勢いがない。これはテレビ局を管理している人たちと大いに関係があると思っている。この人たちは、テレビ局としての抱負がない。ただ、技術を差し込んで冗談をいうことだけ。社長が「志雲飯局」などというものをやっているのがそのいい例だ。これは必要ないと思っている。彼は全身全霊をかけてテレビ局をやっていかなくていいのだろうか。もしこのようなことを続けていくなら、本当にTVBが心配だ」と話した。
無線が俳優たちを一騒制(年俸制でなく、1つ1つの番組で契約する)で拘束してからというもの、確実に多くの俳優たちが外へ出ることを選択している。杜琪峰がもっとも楽しく思っているは、無線が必要としていない張兆輝(チョン・シウファイ)、林家棟(ラム・ガートン)、廬海鵬(ロー・ホイパン)や譚炳文(タム・ペンマン)などの俳優たちが、彼の映画の中で生まれ変わっていることではないだろうか。俳優たちだけでなく、昔を懐かしく思う彼は、無線では淘汰されてしまった製作者たちを雇い入れスタッフとして使い撮影している。杜琪峰は「好いドラマを作る人をどうして使わないのかな? 無線の以前の武術指導の人たちと仕事をするのは、昔の話しをするためさ」と言う。
・鮮浪潮で人材育成
杜琪峰は、最近香港芸術発展局が主催する鮮浪潮短片コンテストに力を入れている。このコンテストの目的は、素質ある映画創作人を発掘することにあり、今年は第2回。彼は自ら王晶バリー・ウォン/ウォン・ジン))、舒琪(シュウ・ケイ)、甘國亮(カム・コクリョン)、陳慶嘉(チャン・ヒンガー)などを講師に選んでいる。
これから数か月、コンテスト入賞者は「マスタークラス」に参加し指導を受け、さらにコンテストに出す短編の撮影準備をすることになる。杜琪峰は「いまの香港映画界には、新しい血が足りない。香港映画界が僕らの代で消えて無くなってしまうのは望んでいないことだ。だから政府に資金を出してもらい、鮮浪潮で映画界で仕事をしたいという映画創作に関わる若い志しのある人を応援している」と説明する。
王晶について
しかし「マスタークラス」のカリキュラムの中で、ある学生は王晶の映画界での地位について疑問を持つかもしれない。敢えて王晶に「自分はなんのマスターだと思いますか」と聞いてみた。王晶は怒らず「通俗のマスターさ」と話した。しかし杜琪峰はそれに反して「王晶は香港映画界で累積10億を稼いでいる。この記録は僕でも出来ない。彼は香港映画界に貢献している。それに映画界には芸術映画を撮る人もいれば、それと同じように商業映画を撮る人もいる。王晶は、彼自身がひとつの流派なんだ。彼を講師に頼んだのは、彼に商業映画を撮るためにコツを話してもらうためだ」と話した。
杜[王其]峰はまた、無線で編集と監督をしているときには、創作と製作で出会うさまざまな問題について、自分はだんだんと模索してながらやってきており、いまの若い人のように講師に指導してもらっていないので、彼らが羨ましいという。「いまの若い製作人たちは僕らより幸福だ。僕の会社の新しい監督の羅永昌や游乃海などは、初めて映画を撮影したあと、精神的に少しまいっていた。僕は彼らにカウンセリングをした。じゃあ僕が何かあった時には、誰がカウンセリングしてくれるんだ」。
・大計画:アラン・ドロン
香港の大監督の中で、杜琪峰は近年多作だと言える。《放・逐》と《蝴蝶飛》のあと、現在は韋家輝(ワイ・ガーファイ)と共同監督の《神探》を急ぎ撮影する。来年には正式に西洋映画を撮影し、国際化への道を進むことになるだろう。なぜなら来年はフランスのベテラン俳優アラン・ドロンでヒーローものを撮影すると言っているからだ。彼が僕を選んでくれたのは本当に嬉しいことだ。彼はすでに70歳を超えているが、まだまだかっこいい。新しい映画では彼をヒーローに仕立てるつもりで、この映画は香港で撮影する」。
・金像奨は透明性がない
杜琪峰はここ2年あまり海外の映画祭に参加している。しかし香港電影金像奨については、制度に問題があり、透明ではないという理由で、毎年、仕事を理由に欠席している。来年《放・逐》は受賞の可能性が大きいが、出席するのだろうか。「その時にならないと仕事しているかどうか分らないので、いまここではその問題に答えられないよ。奨というものは、誰も批判しなければ進歩もない。僕は金像奨と喧嘩をしたいわけじゃない。ただ彼らの制度が公平で公開性のあるものであって欲しいと思うだけだ」。
杜琪峰の映画世界は大部分が男性映画だが、彼の目に女性はどう映っているのだろうか。彼は考えながら笑って「女性、想像するものも難しいし捕らえるもの難しい。どちらにしても「難しい」の一言だ。このところラブストーリーを撮っていない。それは感じるものがないから、撮っていないんだ」と話した。by 2006.10.29「蘋果日報

来年のアラン・ドロンはどうやら本当に撮るようだ。それも香港で撮影!!
上の写真はバイクが並んでいて分りにくいが《柔道龍虎榜》で司徒寶のクラブとして登場した場所。