2006年度香港電影評論學會大奨

昨日、発表。各奨の次に訳したのは受賞理由(かなり意訳&直訳、参考程度に)

今年度、映画館で公開された香港映画は減って52本。質はまちまちで、最後に何回も討論された映画は9本から10本程度。「最佳電影」と「最佳導演」の選考過程では、棄権票も少なくなかった。今年の投票過程は過去になく最も激烈だった。何度も論争が繰り広げられる場面があり、討論、投票を含め10時間に及んだ。

  • 最佳電影:《黒社會以和為貴》
    • 近年の香港映画では、まれな部類に属する。幇會(ヤクザ組織)の伝統秩序の瓦解は、自ずと政治的寓意を感じさせる。大陸への進出は香港の外へ視線を向けさせ、今日の香港の状況は大陸とのつながりが必要であることが明らかに見て取れる。映画は、権力が人間を蝕んでいく様を残忍さと暴力的で描写し、2代にわたる幇会の長が魔界に踏み入っていく様子を綿密に描いている。映画は個人の心理を探り、社会の争いは中国・香港の関係にまでいきつき、それぞれが面白みを持つ。
  • 最佳導演:杜[王其]峰(ジョニー・トー)《放・逐》
    • 杜[王其]峰は再び黒幇(ヤクザ)映画の美学を見せた。銃撃シーンには工夫が見てとれ、優雅な動作から一触即発の緊張が生まれている。登場人物は多いが、監督は群衆劇を統率し、5人の主役の個性を引き出している。赤ん坊の純真さと男同士に友情を描いた香港映画は少ない。監督は2つの物語を縫い合わせる術に長け、まさに絶品といえる。
  • 最佳編劇:王晶バリー・ウォン/ウォン・ジン)、[登β]特希《臥虎》
    • 王晶の「黒白シリーズ」に一脈通じる作品。《臥虎》は複雑で錯綜した物語構造を持っており、香港警察犯罪映画を今一度見直す視線を提供している。《無間道》や《黒社会》とは異なる思想と新たな創作を生んでいる。全編にわたるストーリーの構築は緊密で整っており、筆が乗り、王晶と[登β]特希の創作力に満ちている。
  • 最佳男演員:李連杰ジェット・リー)《霍元甲(SPIRIT)》
    • 李連杰は、大人物を小物に演じるかつての演出の型を破り、少年の気焔が魔物のようになり、しまいに地に落ちるが、最後には精進して一代を築く。感情の振幅の大きさを李蓮杰の身体をもって自在に演じ、全く新しい姿を表現、功夫だけの俳優ではないと観客に証明してみせた。
  • 最佳女演員:鞏俐(コン・リー)《満城盡帯黄金甲》
    • 鞏俐と張藝謀(チャン・イーモウ)は、再び「女性は大胆に突き進む」という物語を作った。菊豆のように情に狂うだけでなく、秋菊のようでもあり、強力な共演者である周潤發と共に、原作《雷雨》の名家の家庭内の争いを宮廷内の骨肉の争いにグレードアップ、国家の一大事と私情を同じ舞台で演じてみせた。鞏俐はある時は細やかな動作でうちに秘めた感情を表し、ある時はその表情とまなざしで、さまざまな感情を表現した。妖艶で復讐心にもえる鬼母だが、最後は、やはり瑠璃の牢獄に閉じ込められ、王からもられた毒を自らは取り除くことのできない悲劇の女性を演じてみせた。
  • 推薦電影8部:《臥虎》《四大天王》《傷城》《放・逐》《黒白道》《霍元甲》《天行者》《父子》

決選に残った作品

  • 最佳電影:《臥虎》《黒社會以和為貴》
  • 最佳導演:杜[王其]峰《放・逐》、譚家明(パトリック・タム)《父子》、劉偉強(アンドリュー・ラウ)、麥兆輝(アランマック)《傷城》
  • 最佳編劇:王晶、[登β]特希《臥虎》、游乃海(ヤウ・ナイホイ)、葉天成(イップ・ティンセン)《黒社會以和為貴》
  • 最佳男演員:周潤發(チョウ・ユンファ)《満城盡帯黄金甲》、李連杰霍元甲
  • 最佳女演員:鞏俐《満城盡帯黄金甲》、秦海[王路](チン・ハイルー)《父子》

by 香港電影評論學會公式サイト

評論學會は、昨年、王晶(《黒白戦場》)に最佳編劇を与えたのに続いて、今年も王晶の脚本を高く評価している。《父子》が意外に評価されていない点、《黒白道》《四大天王》に高い評価などが特徴。《伊莎貝拉》は影も形もない。金像奨の行方が楽しみになった(《父子》が高く評価されるような気がするのだが)。