門徒(プロテージ/偽りの絆)

《門徒》
劉徳華アンディ・ラウ)、呉彦祖ダニエル・ウー)、張静初(チャン・ジンチュウ)、古天樂(ルイス・クー)、袁詠儀(アニタ・ユン)、廖啓智(リウ・カイチー)、何美鈿 爾冬陞(イー・トンシン):監督


麻薬捜査官の阿力(呉彦祖)は、組織に入り込んでもうすぐ7年。香港ヘロイン市場の7割を握る林昆(劉徳華)に密着、昆に信頼され、組織の車両担当になっていた。昆は先天性の糖尿病から腎臓を悪くし、そろそろ商売を阿力に渡し、長女をアメリカへ留学させるついでに自分もアメリカで腎臓移植をしようと考えていた。
阿力は向かいに住む食べるものもままならない様子の阿芬(張静初)と子供の晶晶に同情し、世話を焼いているうちに、2人は関係を持ってしまう。しかし彼女は薬物中毒のうえ、同じく薬物中毒の夫(古天樂)から逃げていた。阿芬は、阿力の助けでなんとか薬物と縁を切ろうとするが、夫に見つかってしまう。昆は、妻(袁詠儀)の妹(何美鈿)が阿力に関心のあるのを鑑みて、2人を近づけ、阿力を家族にしようと考えている。
ある日、阿力がヘロインの固まりを持って商売に行こうとするところを、張っていた海関(税関)に捕まる。殴られながら自らの身分を明かすが、手柄に目のくらんだ海関は阿力を執拗になぐり、ヘロイン工場へ案内させる。海関のしわざでヘロイン工場は大打撃をうけるとともに、仲間の1人は死亡した。阿力は上司・苗志華(爾冬陞)に頼んで偽の情報を流してもらい、林昆の疑惑の目を自らに向けないように画策してもらう。
この事件をきっかけに、阿力は林昆らにいままでにやり方を改めようと提案する。林昆は、阿力に全権をゆだねるべく、家族や阿力を連れヘロンの生産地であるタイの黄金の三角地帯を訪れるのだった・・・・。


脚本がとてもしっかりしていて、スリルもあるし、薬物についての多少の知識も披瀝している。黄金の三角地帯の現状や、ヘロインの需要が減りつつあり、斜陽産業だということなども織り込んでいる。
まず張静初がヤクを打つ場面で始まる。さらに制服を着た警官の呉彦祖が、無人の部屋でソファーに横になっていう「なぜ人が薬物を使うのか分からない。しかし昆哥と阿芬が亡くなったあと分かった。空虚と麻薬といったいどちらが恐怖なんだろう。僕にもそれはよく分からない」と。そして警察と取引をする者たちの追跡劇でいっきに観客を映画に引き込んでいく。
俳優の使い方もよい。撮影開始から話題になっていたが、劉徳華が白髪で腎臓をやんでいるという設定にしている。劉徳華が少々しょぼくれ気味にしたことで、なんとか映画にリアリティを与えようとしたのだろう。ただ、やはり身に付いたスターはなかなか拭えず、劉徳華はやっぱり劉徳華なのが、少々惜しいところ。《墨攻》でも思ったが、もう少し醜男で歩き方がスターじゃないと、本当にいい役者だと思えるのに(だからいつも腰が痛い腎臓病持ちで、スター歩きが出来ない役にしたんだろうけど)。
呉彦祖は、《旺角黒夜(ワンナイト・イン・モンコック)》から爾冬陞のお気に入りになっているようだが、そつなくこなしている。呉彦祖の上司には監督自らが出演。役名は苗志華、《旺角黒夜》の苗志舜と一字違い。本来は方中信(アレックス・フォン)か任達華(サイモン・ヤム)に振りたかったらしいが、2人とも時間の都合がつかなかったそうだ。爾冬陞、あまりうまくない(笑)。
出色は張静初と古天樂。張静初は《七劍(セブン・ソード)》でもキラっと光っていたが、これはまたいろいろかなぐりすてて体当たり。古天樂もすごい。歯並びの悪い歯はたぶん付け歯で顔色がめちゃくちゃ悪く、人相も態度もロッカーでジャンキー。来る物は拒まない古天樂、さすが。さらにヘロインを見て、いきり立つ海関の廖啓智もさすが。
袁詠儀の妹を演じる何美鈿は大陸の女優だが、広州出身で広東語が話せるため吹き替えなし。張静初は多少訛りのある広東語、たぶん吹き替えだと思う。2007.2.13&2007.2.17@旺角百老匯


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門徒》のロケ地についてはココに。