降頭

《降頭》鄭浩南(マーク・チェン)、邵美琪(マギー・シュウ)、林雪(ラム・シュ)、許紹雄(ホイ・シュウホン)、黄徳斌(ケニー・ウォン)、古宇、馮克安、勝子萱 
邱禮濤(ハーマン・ヤウ):監督


刑事の張樂民(鄭浩南)は乳飲み子と妻・嘉碧(邵美琪)をかまってやらず、絶えずかかっていくる妻からの電話を疎ましくも思っていた。ある夜、もうすぐ退職という警官が何者かに襲われた。同じころ樂民の家では嘉碧が得体の知れない痛みに襲われ、赤ん坊は全身を針のようなもので刺され無惨な姿で死亡するという奇妙な事件が発生していた。この2つの事件は、最近刑期を終え出所した林超(黄徳斌)の仕業だと思われた。しかし刑事の琛(林雪)は、樂民の妻と子供は誰かに呪われたのだと考え、呪いを解いて貰おうと清海大師(馮克安)を訪ねるのだが・・・。


III級ということもあり、女性の全裸、男性の全裸(死体だが)、内蔵まで見せ放題(笑)。血も大いに流れるし、虫だのなんだのと表現がグロいので、このあたり苦手な人はまず無理かも。しかしそれを突き抜けると、もう可笑しすぎ。銃撃の後遺症でまったく痛みを感じなくなった男(黄徳斌)を殴ると「おれは痛みは感じないんだよー」と吠えるし、しまいにはこの男の手をめちゃくちゃにたたき潰しておきながら、こいつを死なせちゃいけないと血止めにバーナーで手を焼くというシュールさ。もうーっ(爆)。
それとちょっと書くのをはばかれるようなものが呪いを解くのに必要不可欠なのだが、この片手を焼かれている男が、ニヤと笑いおれが手伝ってやろうかと言ってみたり。この脚本、邱禮濤と林震宇の共同だが、林震宇って少しすかした男なので、その顔を思い浮かべるとより可笑しさアップ。俳優は、杜組ともいえる鄭浩南、邵美琪、林雪、許紹雄に、凶悪顔でいい体のTVB黄徳斌(ブリーフ姿ご披露)、《見鬼10》の古宇は顔じゅうに出来物で美男子台無し。


降頭というのは、呪いをかける行為のこと。人形(ひとがた)に呪う相手の髪の毛をつけて、本人に見立て針でつついたり、飲み物や食べ物を介して「虫」を呪う相手の体内に入れて、この虫を思い通りに動かすことで苦痛を与えたりする。この映画で一番強力な降頭は「飛頭降」といって、呪いをかけるヤツの首が胴体からずるずると抜けて呪う相手のところに飛んでいくというまるで百物語な呪い。呪いをかけたヤツを殺してしまうとこの「飛頭降」は一生解けないという。
それにしても面白いのは、降頭を知っているのは、なぜか南洋(ここではタイ)から来た男だったり、タイの女性だったりすることだ。タイというのは、やはり香港人にとって、得体のしれないものが潜む場所なのだろうか。そしてタイではけして女性の誘惑にのってはいけないという警告だったりもするのか(笑)。この手の映画きっとファンがいるはず、日本でもビデオスルーで十分いけそうな感じ。


呪いをかけられない為には、髪の毛や爪といった体の一部は絶対に他人に取られてはならない。日本でも「夜、爪を切ると親の死に目に逢えない」というのがあるが、実はこれ、暗い夜に爪を切って、爪を誰かに持ち去られ呪いをかけられないようにするためのことざわなのだ。
2007.5.14@新寶戯院


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