死角

《死角》狄龍、姜大衛、李菁、陳燕燕 
張徹:監督 1969年 DVD 邵氏


夜のオフィスに情婦と忍び込み、ラブシーンを繰り広げた張純(狄龍)は守衛に見つかり会社はクビ。張純は何時も試用期間の3か月しか会社つとめがもたない男。仕事より車と女と遊びが楽しい。大衛(姜大衛)らとドライブの途中で車が壊れ難儀していたお金持ちの令嬢・温柔(李菁)を知り、張純は彼女とのデートにこぎ着ける。デートの帰り、2人は警官と犯人の銃撃戦を目撃、張純は犯人が落とした拳銃を拾って持ち帰った。新しい仕事を見つけ意気揚々としていた張純だが、社長が温柔との交際を止めるように言ってきたのに腹を立て、会社を飛び出した・・・。


安月給の若者と会社社長令嬢の恋。《泥だらけの純情》かはたまた《天若有情》か。劇中狄龍の「ジェームス・ディーンに似ているか」という台詞でも分かるように、反抗的な若者を描いた作品でもある。しかし若いと言っても、学生ではなく、スーツを着たサラリーマン。理由なき反抗というには歳とり過ぎていて、インパクトが足りないような。さらにこの主人公、「自分は父親とは違う。母を置き去りにはしない」と言うところがいかにも中国的か。母(陳燕燕)はおもちゃ屋を営んでおり、息子に向かって、「嫌なら仕事に行かなくてもいいんだよ。お前の1人ぐらい養うのはなんでもない」とも。いまで言えば息子はニートか。


狄龍、姜大衛の共演だが主人公は狄龍で、今回は男同士の絆(男の嫉妬も)は影を潜めて、男女の恋愛が話し中心。狄龍の魅力をあますところなく、という思惑だろ。狄龍はハンサムでかっこいいが、武侠片のりりしい狄龍の方がより魅力的に思える。結末への持って行き方もやはり武侠片の方が慣れている感じだ。張徹の現代劇は微妙だ。


劇中「珈琲座」というのが出で来るのだが、ビルの1室の秘密めいた薄暗い部屋に入っていくと、女性が相手をしてくれるという場所。ここに狄龍と男装した好奇心いっぱいの温柔が入って行き、温柔が女性だとばれて大騒ぎになる。実際にこんなところがあったのだろうか。


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