國風

左が阮玲玉。阮玲玉(ロアン・リンユイ)、黎莉莉、鄭君里 
朱石麟・羅明佑;監督 1935年 モノクロ 無声 聯華
 
中学校の校長には2人の娘がいる。姉の蘭(阮玲玉)は堅実でまじめ、従兄(鄭君里)とはお互いに思っている間柄。しかし妹の桃(黎莉莉)が従兄に思いを寄せていることを知った蘭は、自ら身を引き、教師となって田舎に行った。そんな蘭が奨学金を貰って上海で勉強することになった。桃は今は夫となった従兄に学費を出してもらい、自らも上海の学校へ入った。しかし都会の生活に染まった妹は、夫のいる身にもかかわらず新しい男友達をつくり、夫の出してくれる学費をファッショににつぎ込んでいた。さらに堅物の蘭とたびたび衝突し、ついには蘭に屈辱を与え、蘭は病に伏す。勉強が終わり田舎へ戻った桃は、母の学校につとめる。最新のファッションに身を包んだ桃と、同じ学校で学び一緒に帰って来た田舎の名士のドラ息子は学校で好き放題。生徒たちの風紀も乱れて行くのだった・・・。


贅沢は敵だ、貧しい者は力を合わせれば、社会の役に立てる、社会を立て直し、新しい社会を作ろうというスローガンいっぱいの話しなのだが、これを抜きにすると、性格の違う姉と妹の確執というドラマな部分があらわになる。わがままでなんでも思い通りにならないと気のすまない妹が、姉の人生を狂わせて行く。妹が姉に敵対心を抱き陥れる。見ていると妹にも姉にもイライラする(笑)。いまでもどこぞのドラマでありそうな姉妹の確執の話しだ。最後には妹は改心し、服装も質素になりドラ息子と田舎でやり直すと話す。姉は母の学校で教鞭を取り、姉と従兄は再び心を通わせるが、姉は従兄の申し出をひとまず退け、新しい社会のために人生を捧げると話して終わる。


阮玲玉が出演した映画を見るのはこれが初めて。阮玲玉といえば、關錦鵬(スタンリー・クワン)の映画《阮玲玉(ロアン・リンユイ)》の中で張曼玉(マギー・チョン)が演じた人物で無声映画の女優。25歳の若さで自殺している。この《國風》が彼女の最後の作品。映画《阮玲玉》から細く憂鬱気質の女性を思い浮かべていたが、《國風》の阮玲玉からは健康的で、柔和かつ意志の強い女性像が浮かび上がってきた。この《國風》は残っていたフィルムを修復したもので、無声なので、声はもちろん入っていないが、ところどころ効果音が入っていた。さらにこの日は弦楽器とキーボードの生演奏付きだった。
2008.3.21@香港電影資料館「大時代小故事:朱石麟的電影世界」


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