夜車

《夜車》奇道、劉丹 刁亦男:監督


孤独な女性警官とレザボア(水塘)管理人の男の出会いを荒涼とした中国大陸内部の風景と共に描く。出演者も少なく、台詞も多くなく、説明的な映像もほとんどなく、孤独な女と過去に意味ありげな男との不思議な出会いが描かれていく。(台詞は多くないといっても普通話で英語字幕のため、途中面倒くさくなって字幕を見てないので、細かいところは不明。)


女は警官で刑務所に勤務し死刑執行人(もしくはその手伝い)。住まいの隣にはいつも違った男を連れ込んでいる女が住んでいて、となりから漏れる声に、より孤独を募らせる。休みには汽車に乗り遠くの街の結婚相談所に出かけているが、気にいる相手は見つけられない。男はレザボアの監視人。ほほが痩け顔色も悪く、何を考えているのか分からない風貌で、何か焦燥感を抱えているように見える。この2人が磁石のプラスとマイナスのように引き付けられ出会う。しかし男は・・・。


孤独だが、絶望的とも違う、虚しさでもなく、何か不思議な感情が映画全体に充満している。映し出される風景も登場人物の心と同じように、無機質で虚無的。主役の女は若くなく、レザボアの男は少々不気味で、結婚相談所で女に興味を示す男も田舎くさい。出演者は誰も錆びている。映しだされる風景も、色気のない裁判所、汽車の中、女の部屋、レザボア監視員の部屋。晴れることはなく靄がかかっているレザボアや煙をあげる工場。風景全体が何かに覆いかぶされているように不透明で色がない。見ていてこれは映画ではなく、映像で出来た文学だと思った。


この監督、元は脚本家。前作は《制服》といい、これが2作目。《制服》は日本では上映されたことがあるのだろうか? 
2008.3.28@香港国際電影節(科学館)


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