泥孩子

《泥孩子》石慧、江漢、丁亮、勞若冰 
陳靜波・朱楓:監督 國語 カラー 1976年 鳳凰 


政府によって作られた家の無い人々を収容していた安置區と言われる場所が台風による土砂崩れに見舞われる。近くに住む夫婦は土砂の中から救い出された赤子を一時的に預かることになる。身寄りがなければ、子供は孤児院に入れられてしまうため、夫婦はなんとか子供の親族を探そうとする。
子供を無くして精神を病んでしまう妻や、土砂崩れで妻を失った華叔が語る夫婦の物語、母も父も無くし弟だけが身よりの娘。孤児院育ちの主人公夫婦の妻の思い。共働きでなんとか生活をする夫婦の姿などを通して社会の底辺で生きる人々を浮き彫りにし、政府の政策をも風刺していく。


映画が始まると暴風雨に見舞われる香港の街が映し出される。さらにカメラは街をなめながら工業ビルを捉え、煙の上がる窓を映し出す。カメラが工場の中に入ると、そこはメリヤス工場で女性たちが働いている。主人公夫婦の妻はこの工場で働き、夫は夜勤で新聞社の文選工(植字工かも)。そんな夫婦が住むのは雨漏りのする部屋で、大家がいて厨房が共同で、店子が何組も住んでいる板間房に近いもの。その向かいには安置區といわれるバラックが並んだ場所が見える。


安置區は1964年に政府が定めた場所で、水道とトイレ設備だけを政府が提供、家はトタン屋根で各自が建てた。映画の中の華叔が語るところによると、バラックに住んでいたが火事で焼け出される(石[石夾]尾の火災のことか)。焼け跡に勝手に家を建てたが、政府に不法と追い出された。その後家がなく野宿をし、やっと見つけた部屋はビルが老築化して危険と追い出されて安置區に住むように言われるとなっている。


さて、この台風の被害で家を失った人々を政府が登録してどこか住宅を与えようとする場面があるが、土砂崩れで家や家財を失った人にまず身分証を見せろと役人が言う。土砂に埋まったというと、紛失届けを出してからまた来いという。まったく役人は・・・。そして人々は言う、安置區は安全な場所などでなく、安葬區(安らかに葬られる場所)だと。
台風の場面はもちろん実際の台風を撮影したものだと思うが、土砂崩れはどこまでがリアルでどこまでが映画の為なのか分からず、リアルでかなり驚いた。
2008.6.21@香港電影資料館「本土關懷」


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