傘...

《傘...》杜海濱:監督


浙江省の義烏、上海、洛陽の田舎などが次々と映し出されて行く。
傘工場で、布を縫う人、傘を骨に縫い付けていく人、柄を取り付ける人、検査する人、みな若い男女。農村から工場へ出稼ぎに来た人々だ。狭い寮で暮らし、水道の水で髪を洗う。手をぼろぼろにしながら、布を傘に縫い付けて行く。給料が支払われる。700元から800元。
義烏の大きな商業城(ビル)に入る傘の卸売り店では、傘を売るのはいい商売だ。税金を12万払わなければと話し、次に買う車はアウディだと言い張る女性が登場する。
上海では大学に入学しようとする若者が映し出される。次は解放軍。軍隊に入れば、少しはよい暮らしが出来るかもしれない。そして最後は洛陽の農家の麥の収穫。農家の主が語るのは、文化大革命や[登β]小平、政府の農業政策の移り変わり。


とても興味深く面白かった。ドキュメンタリーだが、映し出される風景はけして説明口調ではなく、ただ現実を淡々としかし的確に切り取り提示し、農村がかかえる問題を考えさせる。傘工場では、仕事を説明するでもなく、工程を順序だてて紹介することもなく、傘のさまざまな製造の工程や若い労働者たちのおしゃべり、洗髪、寮の風景が、脈略なく気まぐれのように画面に登場する。それが楽しく、まったく退屈しない。そして最後に登場する農家の主人の語り口がとても魅力的。じっくり字幕を読みたい。ほとんど宣伝をしていないし、会場が陸の孤島のようなエレメンツなのでしょうがないが、こんなに面白いのに、観客はたったの7人だった。
2008.10.5@The Grand Cinema


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