新宿事件(新宿インシデント)

《新宿事件》
成龍ジャッキー・チェン)、呉彦祖ダニエル・ウー)、徐静蕾(シュウ・ジンレイ)、范冰冰(ファン・ピンピン)、加藤雅也、銭嘉樂(チン・ガーロッ)、竹中直人、高捷(ガオ・シエ)、連晉、盧恵光、秦沛(チョン・プイ)、林雪(ラム・シュ)、峰岸徹長門裕之、澤田拳也、葉山豪 
爾冬陞(イー・トンシン):監督


1990年代、恋人の秀秀(徐静蕾)を探しに日本へ密入国した鐵頭は、同郷の阿傑(呉彦祖)を頼って大久保へやってきた。不法就労で食いつなぐ日々のある日、日本のヤクザ三和会副会長江口(加藤雅也)の妻結子となっている秀秀に出会った。


見ていて、何か違和感が付きまとう。
これまでの爾冬陞映画の主人公たちは、陰陽でいえば陰に傾いている。《新宿事件》と同系列だと思われる《旺角黒夜》の呉彦祖方中信、《門徒》の呉彦祖劉徳華もどちらかというと「陰」のイメージを演じている。爾冬陞お気に入りの呉彦祖は、最も爾冬陞の思いを代弁できる俳優なのだろう。成龍はこれまで陽の役を与えられており、陽で正義というイメージが確立されている。そこで今回は、密入国不法就労、ヤクザ社会と関わっていくというダークななかでも自らの立場を不法から合法へ転換していこうという役で、けして成龍の陽で正義なイメージを損ねることはない。その成龍は、自分や仲間は全うな仕事と立場を手に入れたと思っていたが、実はみなヤクザに関わっていたということに気づくところから一気に悲劇のクライマックスに向かっていく。しかし最後の最後まで、成龍はこの戦いを勝ち抜いてしまいそうな力強いイメージをもっていて、けして運命になどに翻弄されそうになく、なかなか悲劇を体現できない。そこで悲劇を一手に引き受けるのがやはり呉彦祖なのだ。


成龍呉彦祖以外に華人側も日本人側もさまざまな人物が登場してくるが、主役以外の人物はあまり詳しく描かれず、非常にもったいない使い方。刑事役の竹中直人成龍の関わりも中途半端でもったいない。爾冬陞は数人の登場人物を深く掘り下げていくことは得意だが、大勢を描き分けるのはあまり上手くないのかもしれない。とりあえず初見の感想はこんな感じ。


しかし、なぜこの映画が中国で公開できないのか理解できない。不法な手段で日本へやってきた中国人に明るい未来などない、ヤクザ社会にかかわればろくな事はないのだといういい宣伝だと思うのだが。
2009.3.22@香港國際電影節(會展)


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