香車美人

《香車美人》葛蘭、張揚、雷震、劉恩甲 
易文:監督 電懋 1959年 モノクロ 国語


張揚と葛蘭は結婚して約1年、毎日会社が終わると中環のフェリー乗り場で待ち合わせ、一緒に帰宅していた。ある日、張揚は同窓生の雷震に出会う。雷震は車のセールをしており、張揚に車をすすめる。そんな余裕はないという張揚。実は張揚と雷震は、かつて葛蘭を取り合ったことがあり、最終的に葛蘭は張揚を選んでいた。張揚は結婚1周年記念に車を購入してはどうかとすすめられてその気になるが、車を買う余裕はなかった。ところが会社は彼に建築現場監督の残業を与えてくれる事になり、なんとか頭金も工面して車を購入しまうのだが・・・。


夫婦が住むのは九龍側の間貸しの部屋。張揚は建設会社につとめ設計を担当、まだ建築士の資格は持っていない。葛蘭は洋服屋(ブティック)につとめている。当時、車はあこがれの乗り物だっただろうし、車の購入が中産階級へ入り口でもあったのだろう。車を買うことから派生するさまざまな金銭的問題と、張揚、雷震、葛蘭の微妙な三角関係、さらにとなりに住む女性を絡めた四角な人間関係などが細かく描かれている。特に紆余曲折していく夫婦の心の機微がしつこいと思えるほど細かい。よく車からこれだけの男女の物語を創り出せるものだと感心する。


中環フェリー乗り場の前には、現在と同じ立体駐車場が見え、フェリーピアの時計も動いている。(現在の)大會堂はまだ建っておらず、その部分が露天の駐車場になっていたようだ。もちろん当時は隧道がなかったので、フェリーは車を載せてビクトリア湾を行く。当時の香港の様子、生活の細かい部分をも推測出来てとても興味深い作品だ。
2009.4.11@香港電影資料館(兒女情長:易文電影)


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