機動部隊・絶路

《機動部隊・絶路》任達華(サイモン・ヤム)、邵美琪(マギー・シュウ)、林雪(ラム・シュ)、曾國祥(デレク・ツァン) 
劉國昌(ローレンス・ラウ/ローレンス・アモン):監督 DVD


廟街で闇タバコを売っているところを森(任達華)らに目をつけられた盲輝(曾國祥)は、警官に殴られ闇タバコの倉庫を白状してしまう。ブツを警察に摘発されたヤクザは、盲輝を痛めつけてやろうとやっきになる。盲輝は密かに心を通わしている大陸からやってきた不法滞在の風俗嬢の元に身を隠すが、居所が知れたうえに、ヤクザたちは風俗嬢も痛め付ける。行き場もなく、お金もない2人は野宿をするしかなかった。盲輝が生き残るには・・・。


タイトルの「絶路」を見れば分かるようにかなりやりきれない内容。ヤクザ世界でも底辺に位置するだろう盲輝を曾國祥がこれまたなさけなさ十二分に演じている。彼女の風俗嬢も薄幸そうな顔で、さらにやりきれない最期。警察もヤクザ世界のもめ事に積極的に入っていくことはなく、つねに傍観者として存在しているだけ。ヤクザ世界からも疎外され、市民の保護者であるべき警察からも保護されない、行き場ないまさに「絶路」な2人が悲しさを纏って生きて行く姿が描かれて行く。


杜琪峰(ジョニー・トー)がプロデュースした「機動部隊」シリーズは全部で5作品ある。この《機動部隊・絶路》以外に、《機動部隊・警例》(id:hkcl:20081021)、《機動部隊・同袍》(id:hkcl:20090110)、《機動部隊・人性》(id:hkcl:20090628)、《機動部隊・伙伴》(id:hkcl:20090701)。
これらの作品は、任達華、邵美琪、林雪など主な演者は同じだが、物語は1作づつ独立している。これは、譚家明(パトリック・タム)、許鞍華(アン・ホイ)、嚴浩(イム・ホー)らが監督したTVB初期の傑作テレビシリーズ《CID》とよく似ている。CIDの活躍を描くこのシリーズは、時に観客が犯人の方に肩入れしてしまいそうになるほど犯人の心情を描いていたり、警官の方の事情(恋愛も)が描かれていたりと通り一遍の警官ドラマではなく、物語の幅がかなり広く、1作ごと雰囲気もかなり異なっていた。「機動部隊」シリーズを作るさい、この《CID》シリーズを思い浮かべたのかもしれない。
昨年から今年にかけ、《CID》を初めとする実験的なテレビドラマシリーズを電影資料館で見られたことは大いなる幸い。これらが確実に今の香港映画のベースにあることがよく分かった。


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