桃姐(桃(タオ)さんのしあわせ)

《桃姐》
葉徳嫻(デニー・イップ)、劉徳華アンディ・ラウ)、秦海璐(チン・ハイルー)、秦沛(チョン・プイ)、黄秋生(アンソニー・ウォン)、徐克(ツイ・ハーク)、洪金寶(サモ・ハン)、杜汶澤(チャップマン・トー)、羅蘭(ロー・ラン)、江美儀 
許鞍華(アン・ホイ):監督


Roger(劉徳華)は学生時代アメリカで勉強し、いまは香港へ戻ってきて映画の仕事をしている。梁家は移民しており、独身のRogerは梁家で長く家政婦をしている桃姐(葉徳嫻)と暮らしている。桃姐はRogerのために買い物をし、洗濯をし、食事を作るのが日課。ある日、Rogerが出張から家に帰ると、桃姐が倒れていた。病院で卒中と診断された桃姐は養老院に入るといい、Rogerは養老院を探してやるのだった・・・。


映画プロデューサーでもある李恩霖の実話に基づく話しで、疑似ではあるが親子の物語と言えるし、老いていくことを考えさせられる映画でもある。
物語は淡々としており、決定的な場面は描写せず、説明的な言葉も省き台詞も多くない。丁寧に丁寧に桃姐や老人ホームの老人たちの姿、それらを見つめるRogerの姿を写していく。ことさら感情をあおることもない。細かい描写の積み重ねが桃姐の不安や喜び、人となりを浮き彫りにしていく。さらにはRoger一家と桃姐の幸福な関係、Rogerと桃姐の疑似親子の絆を描き出す。
劉徳華はこれまで見て来た映画の中でもっとも普通の男を演じ、ベネチアで主演女優奨を射止めた葉徳嫻の演技は自然で、メイクもあり本当に老人かと思うような顔つき、さらに歩き方も老人のそれを演じている。これまでも親子を演じたことのある2人の掛け合いは至極自然で無理がなく、安心して見ていられる。
天水圍2作品よりさらに成熟した許鞍華の演出は、演出を演出と感じさせない域にまで達している。《天水圍夜與霧》ではまだ外連味が感じられたが、この作品では「日常」を切り取って観客に提示しているにすぎないとさえ思わせる。(続きは後日)
2011.9.26@UA iSQUARE(優先場)


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