春嬌與志明(恋の紫煙2)

彭浩翔監督
楊千嬅(ミリアム・ヨン)、余文樂ショーン・ユー)、楊冪(ヤン・ミー)、徐崢、鄭伊健(イーキン・チェン) 彭浩翔(パン・ホーチョン):監督


初見の感想はココ
今回の感想も初見の時と同じ。心理描写が本当に上手い。リアリティがある。
上映後、彭浩翔監督とのQ&Aがあったので、以下簡単に内容を(出席:彭浩翔、最上=翻訳&通訳、司会)。

司会:監督の大陸に行った経験がこの作品にも反映されているのではないかと思いますが、その事も含めてみなさんにご挨拶をお願いします。
彭浩翔:前作《志明與春嬌》に出てくる話の多くは僕と妻や周辺の友人たちの話でできています。そしてこの《春嬌與志明》を撮った時、僕は北京で生活していたので、話の舞台を北京にすることにしたのです。それは多くの香港人と同じです。多くの香港人は仕事の関係で大陸で生活をしていますから、そんな彼らのことを描いてみたいと思ったので、2人の物語を北京に移すことにしたのです。
司会:最上さん(字幕翻訳者)、今回の作品はこれまでの作品と違うというような印象はありましたか?
最上:翻訳するうえでは、そんなに大変なところはなかったのですが、最後に志明が女装してみせるというシーンは、そこは日本語字幕を付けなくていいという指定がきていました。監督はそこまで、字幕のことまでも考えている人なのかな〜と思いました。
質問:「1」の時に大陸で上映するときに沢山カットしなければならなかったと言っていたと思いますが、今回は脚本審査の必要があったと思うのですが、審査の事を考えて、本当はこれは入れたいけれどやめたというようなエピソードはあったのでしょうか? また気を遣った部分はあるのでしょうか?
彭浩翔:大変幸運な事に今回はまったくカットされることはありませんでした。話の内容は香港版と大陸版はまったく同じです。今回はそのような問題は起こりませんでした。ただ大陸ではタバコを吸うシーンはダメなのですが、ちょうどいいことに前作の最後で2人は禁煙をしています。よく見ていただくと分かると思うのですが、楊千嬅はレストランの外でタバコを吸うシーンがありますが、実はタバコをもってはいるものの吸ってはいません。「1」では審査を通ることができません。なぜならタバコを吸うシーンが沢山すぎるからです。また台詞にも変更がありませんでした。なかには沢山の粗口がありますが、大変幸運なことに、審査委員は広東語が分かりませんでしたので、それが粗口だと分からなかったのです。この映画のあとからは審査委員に広東語の分かる人をおいているようですよ。
質問:さらに続篇をつくる予定はありますか?
彭浩翔:沢山の人がそのとことを聞いてくるので、考えたのですが、続篇を作るつもりはありません。シリーズのようになるとプレッシャーが大きくなりますから。ひとつ考えたのは、新しい方向のものです。「1」も「2」も最初のところはホラーなんです。初めの5分はホラーで、そのあとコメディになります。本当に続篇をつくらなくてはいけなくなったら、全編ホラーにしてしまおうと考えました。コメディになるんじゃないかと思っていてもずっとホラーなんですよ。出資者はそれには賛成してくれませんので、その予定はありません。
質問:本人役で出演している人がいるのと、少し古い香港の事をとりあげたのは何故か? 新しい恋人とはキスシーンがあったのに主人公2人はキスシーンがなかったのは何故か?
彭浩翔:「1」の時には脚本を書いていて、あ、これはラブストーリーなのにキスシーンがないぞと思ったのですが、無くても面白いじゃないかと考えたのです。多くの人は映画の中に必ずラブシーンがあると期待したかもしれませんが、この映画ではそれが有りませんでした。主人公たちはラブホにも行くのですが、そういうシーンはありません。その1の”決まり”を2でも踏襲しようと考えたのです。当然、余文樂は不満でしたので、楊冪とのシーンを作ったのです。
質問:ヘビーな作品のあとは気軽に撮りたい。撮影は2週間とか。他の映画のチャップマン・トーより監督の映画のチャップマン・トーは男の哀愁を漂わせているとか、中国の検閲についても、撮影短いが編集には時間をかけるのか? 音楽へのこだわりはあるのか? 一番こだわっている事はどんなところですか?
彭浩翔:中国の検閲についてはあまり余計な事は考えていません。まず物語が大陸に相応しいかどうかを考えます。相応しいと思えれば、本来の物語に何も問題はないということですから、大陸へ入っていけると思います。例えばこの《春嬌與志明》のようにです。しかし《低俗喜劇》のようにまったく大陸に相応しくない映画の場合は、大陸で上映することはあきらめます。そのように簡単に考えています。その方がクリエイティヴィリティからいってもやりやすいからです。もちろん大陸をあきらめれば興行成績も低くなります。香港とその他の海外の市場だけをあてにするわけですからね。そこで資金を回収するためには、短時間で撮影するわけです。《低俗喜劇》のように早く撮ります。
チャップマン・トーが僕の映画と他の映画では違うということについては、他の映画は僕が撮ったわけではありませからね。それは才能の違いだと思いますよ。
音楽については、僕は音楽について特に気を遣っています。ほとんどの場合、脚本を書いている段階からどんな音楽がいいか考えています。監督によっては音楽にあまり気を使わない人もいます。撮影してしまったら、音楽をすべて人に任せてしまうという人もいます。僕は脚本を書いている段階から音楽担当と話合いをしています。この映画の中で余文樂が楊千嬅を追いかけて行く駅のシーンで英語の曲が流れます。これは曲婉婷という女性の歌手が歌っているものです。彼女は東北出身でカナダで活躍してます。この曲は僕が北京で暮らしている時、家の近くのカフェで毎日脚本を書いている時に、そのカフェの子が毎日のようにこの曲を流していたので毎日のように聞いていた曲です。誰が歌っているのか知りませんでしたが、いい曲だと思っていて、この曲を聴きながら脚本を書いていました。中国人っぽくなく、外国人女性の声だと思っていたのですが、あとになって探し当てたら中国人だったのです。この曲がこの物語を書いていくのを助けてくれたので、《春嬌與志明》にはこの曲が必要だと思いました。最後に出てくる「別問我是誰」(王馨平の歌)は、僕が子供の頃に聞いていた曲で大好きな曲ですし、よく家でMVのまねしていました。それで最初からこの曲を使おうと考えていました。
司会:次のプロジェクトいついて。
彭浩翔:自分で撮るのは疲れてきたので、あまり自分では撮らずにプロデューサーと俳優でやっていきたいと思っています。ちょうど王晶監督の作品で準主役を演じたところなので、この方向で行きたいな〜と思っています。俳優をするのは好きですが、自分で撮って自分で演じるのはやりたくないです。自分で撮って自分で演じるのはよくないですね。他の人が監督の作品に出たいです。
司会:《一頁台北台北の朝、僕は恋をする)》の陳駿霖(アーヴィン・チェン)監督にゲイストーリーを提供したとか。日本のAV監督、出演とか? 夢と野望など。
彭浩翔:AVには特に思い入れがあります。AVを沢山見て大人になったのですから、AV女優と友達になりたいと思っていたのです。だから第一作の《買兇拍人》にAV女優の役があります。けれど当時は撮影を急いでいたのと、制作費の都合からホントのAV女優を起用することが出来ませんでした。それで再び《AV》を撮ったのです。この映画は大学生がAV女優と知り合いたいがために偽の映画撮影をしてAV女優を香港に呼ぶという話です。

以上。


2013.8.25@シネマート六本木
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