魔術男

左から監督、梁暁豊、楊淇、徐天佑。徐天佑(チョイ・ティンヤウ)、楊淇(ケイト・ヨン)、梁暁豊(アンジョー・リョン) 
黄修平(アダム・ウォン):監督


阿希(徐天佑)とLeggo(梁暁豊)の子供の時の夢はマジシャンになること。阿希は、だんだんとマジックの腕を磨いていき、今はマジックカフェの店長でマジシャン。Leggoは、茶餐廳の出前持ちで、出前先で簡単なマジックを見せるのを楽しみにし、時に阿希を手伝っている。ある日、阿希を手伝い路上でマジックを披露している時に見かけた阿Wing(楊淇)を好きになる。彼女はブランドもののセカンドハンズ店(二手店)の店員。Leggoは、呼ばれてもいないのに出前を届けては、マジックを見せて彼女の気を惹こうと考えた。


監督の黄修平はインディペンデント出身。今回、商業作品を作るにあったて、改めて勉強しなおしたという。さらに観客に1粒のキャンディを届けようと思ったという。その甲斐あって、香港映画には数少ない、スイートなラブストーリーになっている。特に眼を引くのが、主役で新人の梁暁豊。監督と彼はこの香港亞洲電影節で知り合ったという。彼はマジックが得意で、Harry哥哥(香港のマジシャン)に師事し、この映画の脚本にも関わっているという。その梁暁豊が、子供のまま大きくなってしまったような無邪気な若者を演じていて、なかなかよい。徐天佑は妙にクールな役。楊淇はそのまま。その他、小儀(シウイー)や903の人々や黄又南(ウォン・ヤウナム)、樋口明日嘉も日本人役で登場する。


舞台になるのは、旺角のカフェや茶餐廳、二手店。黒社会も警官も登場しない旺角の街の普通の若者たちの話し。旺角の街を自転車が走り抜けていく。旺角を舞台に可愛いラブストーリーが出来上がった。タイトルの《魔術男》の「男」は、やっぱり《電車男》から? 
2007.10.7@百老匯電影中心「香港亞洲電影節2007」 


■□07年に見た映画一覧□■

専題講座・香港電影「張愛玲與電影」

講者:黄愛玲(香港電影資料館研究主任) 於:香港中央図書館


専題講座・香港電影は3回シリーズ(前回は李安の座談会と同じ時間だったため出席できず)。7割ぐらいの理解だと思うが、覚えていることを少し。転載禁止

  • 香港、台湾、中国大陸の多くの監督たちが是非撮りたいと思っているのが、張愛玲(アイリーン・チャン)の作品だ。
  • 許鞍華(アン・ホイ)の《傾城之恋(傾城の恋)》は、作品としては成功しているとはいえないが、この映画がさまざまな方面に影響を与え、台湾の監督や中国大陸の第5世代の監督たちが、張愛玲を撮りたいと思うようになった。舒琪(シュウ・ケイ)は「怨女」を撮りたいと思っていたし、楊徳昌エドワード・ヤン)は「色・戒」を撮りたいと考えていた。楊徳昌版「色・戒」のキャストは非常に興味深く、林青霞(ブリジット・リン)と、易先生に、後の王家衛(ウォン・カーワイ)《花様年華》で張曼玉(マギー・チョン)が勤める会社の社長を演じる雷震(ロイ・ジャン)を考えていた。
  • 張愛玲の小説には、彼女が子供の時の記憶が色濃く表れていると思われる。例えば《海上花(フラワーズ・オブ・シャンハイ)》の食事のシーン、(タイトル聞き取れず)の親子がアヘンを吸引する場面など。
  • 張愛玲の小説に登場する香港は、特別な雰囲気を持っている。それは香港人が見る香港ではなく、一時期香港に逗留した香港外の人が見た香港の印象である。それを映画で表現するのはとても難しい。
  • 許鞍華の《傾城之恋》が成功しているとはいえない理由は、一つに言語の問題。《傾城之恋》は広東語で撮られているが、やはり北京語であるべきだ。周潤發(チョウ・ユンファ)は好きな俳優だし、繆騫人(コラ・ミャオ)も上手い女優だが、周潤發の范柳原も繆騫人の白流蘇も原作のイメージとは明らかに違う点だ。
  • 張愛玲の小説を映画化したもので、成功したものはない。ただし《色・戒》は、これまでの中では最も成功していると思う。張愛玲の「色・戒」から李安の《色・戒(ラスト、コーション)》を作り出した。
  • 張愛玲は、自らも映画の脚本を書いている。特にアメリカに行ってから電懋に書いた脚本は、自らの小説とはまったく違って、すべて軽いコメディになっている。それはハリウッド映画を見るのが好きだったことに関係しているだろう。