ご質問への答え

id:hkcl:20041009のコメントのご質問への答えとして。
陳可辛は、香港映画が抱える問題をいくつか話しています(録音していたわけではないので、記憶で答えます)。

  • まず、人材の不足。特に新人監督がまったく出てこないこと。これは彼らに機会を与えていないわけではなく、ホントに出てこないと言っています。したがって《江湖》の黄精埔が初監督(本編)でそれなりの興行成績を上げたことは、ここ数年の香港映画の大事件だと話しています。
  • 若い俳優の不足。いまも10年前と同じ顔ぶれ。40代の俳優は、さすがに20代は出来ないが、いつまでも30代を演じつづけている。
  • 市場の問題。香港はなんせ人口が少ない(約700万人)。たとえば、アメリカなら人口の1%しか見ない映画でも十分に産業として成り立つが、香港では成り立たない。従って、香港以外の地域にも配給したい。現在台湾は98.4%がアメリカ映画を見。残りを香港・韓国・日本映画が埋める状態で、香港映画の配給は望めない。韓国は以前は香港映画の市場であったが、いまは自国の映画が力を付けてきたため、そちらに重点が移っている。最終的に目差すのは大陸なのだが、アプローズピクチャーズの成立時(1999年?)には、まだ大陸の市場は開いておらず、香港映画は電影局(映画を審査する映倫のようなもの)の審査を通らず、上映することが難しかった。従って暫定的に他国に活路を見いだした。しかしそれで分かったのは、アジア全域で受け入れられる映画は、アメリカでもヨーロッパでも受け入れられるということだった(《見鬼》を例に出して話している)。大陸については、そろそろ入ってもいいかと思うが、最初に入る人はやはり大変。まだ少し先になるのでは。
  • 先を見ている映画会社がない。以前は邵氏や嘉禾があったが、いまはもうない。目先の事しか考えない、ただの商人な映画会社ばかり。儲かればばどんな商売でもいいという考えの人が多い。これでは映画人は育っていかない。

と以上のような感じです。まったくその通りだと思いました。陳可辛は非常に客観的に冷静な判断で香港の映画と映画産業を見ています。