続き

実は昨日の(id:hkcl:20041207)にはまだ続きがあるので、それも含めて・・・。
まず1つ大事なことは、香港の人口を考えなくてはいけないということです。調べたところ、平成15年の統計では、日本のF1(20〜35歳)女性は1千311万6000人、F2(35〜50歳)女性は1千206万3000人いるそうです。香港の人口は少し古いですが2000年の統計で677万人です。日本のF1やF2はそれだけで香港の人口の2倍近いということです。従って日本ではターゲットを絞っても十分にペイできるのです。たぶん香港ではそれだけでは無理でしょう、プラスアルファが必要だと思う。(人口については、陳可辛の話id:hkcl:20041013#p2も参考に)。
そしてたぶん女性層をターゲットにしたと思われるのは、古くはUFO製作の一連のもの、百分百感覚シリーズから、比較的最近のものでは、劉徳華アンディ・ラウ)+鄭秀文(サミー・チェン)+杜琪峰(ジョニー・トー)コンビの作品などがある。ちょっと思いつくものを上げてみよう。

一応香港映画もそこは考えていたわけだ、しかしこれらもいまいち入りが悪くなっている。さらにもっと若い世代に向けては、TwinsやBoy'zや森美が出る映画も作っているが、Twinsの《千機変》以外はどれもそうヒットはしていない。
では香港映画は、次にはどんな観客を捜さなければならないのだろか。オヤジたちを映画館に呼び戻す努力をすべきなのか? それとも香港はあきらめて大陸を目差すのか? いやもっと広くアジア全体を視野にいれて映画を作るのか。さらにハリウッドも目差すのか? たぶん香港にはそのどれもが必要なのだろう。アジア全体をターゲットにする件については、これも陳可辛の項を参考にしてほしい(id:hkcl:20041013#p2)。そしていま最もみなが渇望しているのは大陸の市場開放。しかし、そこにはいくつもの問題がある。
『電影双周刊』は、その問題の1つとして、大陸に配給するために、香港版と大陸版の2つの版を作るという事を上げている。2つの版を作らなければならない理由の大きなものは、香港と大陸の観客の好みの違いという名目だが、その実は電影局の許可を得るための自粛である。《無間道》《旺角黒夜》《2046》など、大陸へ配給するために、カットしたり、設定を変えたりしている。《無間道》では、大陸版用に結末を変えたにもかかわらず、配給は出来なかった。結局VCDを出すに留まった。さらにこれを読んでびっくりしたのは《旺角黒夜》だった。大陸から香港にやってくる張栢芝セシリア・チョン)と呉彦祖ダニエル・ウー)が旺角で知り合う事が重要な物語のキーになるこの映画を、なんと2人は南の方(こう『電影双周刊』に書いてあるのだが・・、いったいどこの南なのか)からやって来たということにしてしまっているという。これも香港映画生き残りのための秘策といえば、そうなのかもしれないが、果たしてそれでいい映画が作れるのだろうか、また監督や出演者は満足なのだろうか? 《2046》は梁朝偉のベッドシーンが削られているそうだ。
そしてもちろん大陸と香港の好みの違いも、大きな越えなければいけないハードルだ。香港映画が大陸の好みに合わせていくことで、香港映画の味とも言うべきものは失われはしないのか。またそうなった時、その映画は香港映画と呼べるのか?? その時香港映画は変わってしまうのかもしれない、いや新しい香港映画が生まれるということなのかもしれないが。
それでも大陸は香港映画にとってどうしても必要な市場であることは間違いないのだと思う。香港映画人は、「中国全土とはいわない、せめて香港に近い広州や福建あたありをまず解放してほしい」と言っている*1
香港映画はいま模索しながらもがいているのだ。しかし今をしのいで、越えて行かなければならない。呉宇森の言葉を借りるなら、「かつて香港はいろいろな困難を乗り越えてきた。必ず香港映画はいまの苦しい状況を乗り越えて行くと信じている」。

*1:その理由がすごい。広州あたりでは、香港のテレビが受信出来るので、みんな香港のテレビを見ている。すでに好みも香港と変わりないというものだった