芳芳姐謝賢(パトリック・ツェ/ツェ・イン)、蕭芳芳(ジョセフィーヌ・シャオ)、龍剛(ロン・ゴン)、張儀、孟莉 
龍剛:監督 1968年


スリの謝賢は、ケーキを買って帰ろうとする男を狙って財布をすろうとして抵抗され男を死に至らしめてしまった。警察官に追いかけられ、途中、目の不自由な娘(蕭芳芳)の家に潜んで警察官をやり過ごした。ところがこの娘が、今しがた財布をすろうとして、死なせてしまった男の娘であった。目に付く赤いジャケットを娘の家で脱ぎすてた謝賢は、自分のねぐらに帰っていった。しかし身分証を娘の家に忘れたことに気が付き、取りかえしに再び娘の家へ行くと、そこで娘の従兄に間違えられる。
時間が経つにつれ、罪の意識にさいなまれ始める謝賢が、三度目に娘の家を尋ねると、身よりのない娘は教会に引き取られていた。教会を尋ねた謝賢は、父の死に打ちひしがれている娘を見、従兄だと偽り元の家に連れて帰り、自分が面倒を見ることにした。改心した謝賢の心使いに次第に生きる力を取り戻していく娘。しかし謝賢のスリ仲間や彼女が放っては置かなかった。


話は教訓的で、お涙頂戴的ではあるが、出演者たちの若い時代を見るのは楽しい。謝賢がとにかく若い。サングラスを口にくわえたり、スポーツカーを乗り回して、スカした恰好で現れる。ちょっと笑うのだが、当時としてはかなり格好良かったのだろう。それにしてもスリなのだが、手口が乱暴で、ほとんど強盗だ。蕭芳芳は目の不自由な役のため、本質を見通すような瞳を観客に向けることはないが、それでも十分に魅力的だ。


電影資料館、今回のテーマは「映画の中の建築」なので、映画のストーリーはさておき、出てくる風景を楽しんだ。半島酒店付近、九龍塘、ビクトリア湾、ピークトラム、中環などが登場する。娘が住む九龍塘、KCRの線路付近はまだ整備されていないし、ビクトリア湾は広く、ピークからの眺めには高いビルが見あたらないので、海岸線が見える。当然空気も良さそうだ。こういう屋外ロケのある古い香港映画は、古い町並みが見られて楽しい。それに俳優たちの発音が綺麗なので、美しい広東語が聞ける。
電影資料館、この日は半分ぐらいしか人が入っていなかったのだが、なんと蕭芳芳、御本人が見に来ていて(講演があったわけではなく純粋に見に来ただけ)、見終わったあとには、気軽にサインや写真に応じていた。蕭芳芳の左耳に補聴器が見えた。
2005.2.20@香港電影資料館


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