三岔口(ディバージェンス)

郭富城(アーロン・クォック)、鄭伊健(イーキン・チェン)、呉彦祖ダニエル・ウー)、李心潔(アンジェリカ・リー)、羅嘉良(ロー・ガーリョン)、曾志偉(エリック・ツァン)、寧静(ニン・チン)、李燦森サム・リー)、于榮光(ユー・ロングアン)、林雪(ラム・シュ) 
陳木勝(ベニー・チャン):監督


ストーリーが書きにくい(汗)。
刑事(郭富城)は、カナダから秘密裏に実業家・饒(羅嘉良)のマネーロンダリングの証人を護送して来た。しかし香港へ着いた途端に殺し屋(呉彦祖)に狙撃され証人は死亡する。饒は、マネーロンダリングの容疑で資金を凍結されいらだち、弁護士(鄭伊健)になんとかしてくれと訴えていた。
饒の息子は近々歌手デビューすることになっていたが、ある夜、突然に失踪する。いったい誰が・・・。さらにいらだつ饒。饒をはっていた刑事は、おかかえ弁護士(鄭伊健)の妻が10年前に失踪した婚約者にそっくりなことに驚く。刑事は饒の息子の失踪当夜、写真を撮ったパパラッチがいると知り、部屋を尋ねるとカメラマンは死亡していたが、部屋で不審な人物と鉢合わせ、追跡し大乱闘となる。これが原因で刑事は上司と反目、拳銃を突き返してしまう。刑事は失踪した婚約者そっくりの弁護士の妻を盗み見る日々。そしてある夜・・・・。


陳木勝、アクション場面は相変わらず力強い。車はひっくり返り大破、郭富城VS呉彦祖の戦いには長く、見ているこっちの息が止まりそうだ。全編に流れる重いパンチのような沈鬱な雰囲気とアクション場面には文句はないだろう。
今回、いつもの陳木勝と違うのは、個々の登場人物の内面を描き出そうとする岸西(アイビー・ホー)の脚本による。岸西といえば、陳可辛(ピーター・チャン)《甜蜜蜜(ラブソング)》、許鞍華(アン・ホイ)《男人四十》と一貫して文芸作品を手がけている。


《三岔口》とは三叉路のこと(京劇の題でもあるが)。3つの道(郭富城、呉彦祖、鄭伊健)が交わるところに物語が出来上がるという意味だろう。
直情型で何事にもまっすぐな郭富城、刹那的だが冷静、悪とも善とも区別が付きにくく自らの職業に忠実な呉彦祖、冷静沈着で切れ者だが、心に何か隠し持っているような鄭伊健ら主役陣から林雪の情報屋、曾志偉の検死担当官らの脇役まで、それぞれの関係についても細かく描かれている。内容は豊富すぎ、処理しきれなくなるのではと思うほど。
きつきつに詰った感情とアクションが苦しい。特に郭富城の感情が過多で、失踪した婚約者に似た鄭伊健の妻(李心潔)に対する態度はストーカーだし、妄想もひどく、明らかに診療が必要かと(笑)。さらに同じく濃いのは羅嘉良。顔も濃いがTVBで養った演技はどろどろ。いま夜中に再放送中の《創世記》そのままのイメージ。薄味担当の呉彦祖と鄭伊健には寧静と李心潔という女性をつけて補強。誰も彼もが過剰だ。
結果、こんなにもいっぱいの感情とアクションを詰め込んでも散漫な感じがする。さらに決定的なのは、私には犯人の犯罪心理が納得できなかったことだ。
2005.4.28@旺角百老匯


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