阿飛正傳(欲望の翼)

阿飛正傳張國榮レスリー・チャン)、張曼玉マギー・チャン)、劉嘉玲(カリーナ・ラウ)、潘迪華(レベッカ・パン)、 張學友(ジャッキー・チョン)、劉徳華アンディ・ラウ)、梁朝偉トニー・レオン) 
王家衛(ウォン・カーワイ):監督  1990年


デジタルリマスター版が出たので見直す。初めてこの映画を見たのは、たしか渋谷パルコの上の映画館だった。日本公開は1992年3月。《重慶森林(恋する惑星)》で、王家衛がブームになるまえ、見ている人はそれほど多くなかったという記憶。単に「香港映画」ということだけで、見に出かけていったと思う。当時は、広東語も北京語も区別もつかず、まして潘迪華の話す言葉が上海語であることも分かっていなかった。


俗にいう「香港ノワール」が全盛の時に、このような映画を作ってしまった王家衛は偉大だった。しかし当時それを見た私は、かなり戸惑った。こんな香港映画があるのか。そして、《男たちの挽歌》とはまた違う張國榮の姿にも戸惑ったが、あまりも張國榮その人に張り付いたような役に感心もした。そしてそれは、張曼玉も劉嘉玲も張學友も劉徳華梁朝偉にも言える。どの役も俳優たちが本来持っているキャラクターに近いと思えてしまうことに、いたく感心した。
髪が顔にへばりつく湿度100%の空気、カメラのレンズに水滴がいっぱい付きそうな雨、フィリピンの熱帯雨林の緑、張國榮が背中を向けて歩いて行くスローモーションの後ろ姿、そんなことがひどく印象に残っていた。
昨日の「明報」の記事に沿っていうなら、いま見ても、やはり香港でしか撮れない映画だし、王家衛しか撮れない映画だった。


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