男與女(香港ラバーズ 男と女)

《男與女》鍾楚紅(チェリー・チェン)、萬梓良(アレックス・マン)、關海山、羅烈 
蔡継光:監督 1983年 邵氏 DVD


大陸(広州)から海を泳いで香港へやってきたらしい娘(鍾楚紅)は、バラック小屋で同じような境遇の肉体労働の男どもや女性のもとに身を寄せた。香港に住む親戚を訪ねるが、面倒に巻き込まれたく無いと、相手にしてくれない。
ある日、バラック内の賭場へやってきた男(萬梓良)が追われ、娘がシャワーを浴びているところに飛び込んできた。男は何もせず、ほどなくして逃げていった。そしてある夜、警察に声をかけられた娘を男は救ってくれた。2人は好意を持つようになる。
男はかけ事が好きで、不法拳闘の試合に賭け、まけたことに怒り暴れたところが興行主の目にとまり、本物のボクサーになることに。後に男はタイからやってきたのでタイ式ボクシングの心得があると分かる。
バラックで暮らす娘は食事を作り洗濯をし、男の性的欲求のはけ口としても扱われていた。しかし身分証のない彼女にはまっとうな働き口はなく、そうするしかしかたなかった。そんな娘を見かねた隣人が、自分の知り合いに大工で真面目な中年の男(關海山)がいる、中年男は子供が欲しいので、その男と結婚してはどうかと持ちかける。娘はバラックよりよい暮らしに、それなりの手当てを貰えるとあって承諾する。ある日、中年男とボクシングの試合を見にいった娘はリング上にいる男と再開する。中年男との生活にも心はみたされていなかった娘は、男と逢瀬を重ねるようになっていた・・・。


鍾楚紅の体当たり演技が話題になったようで、 DVD発売時もその事が大きく取り上げられていたが、この映画は金馬奨最佳原著劇本に選ばれていて、社会の下層に生きる人々の姿を描いている。大陸からやってきた娘が香港に求めたもの、タイからやってきた男が香港で夢見るもの、中年男の悲願、3人の欲望がからみ合って物語は進む。最後は悲劇的で後味はよくないが、いま見ても十分鑑賞にたえる。
映画に登場する香港の街が興味深い。始まりは、ビクトリア湾を望む風景からカメラが徐々に街の中に下りてきて、古びたアパートを映し、さらに道を歩く娘を写し出す。湾仔あたりかと思う町並み、尖沙咀東、バラックが立ち並ぶ地区など。そして物語りの終わり、道路からカメラは上に上がり、ビクトリア湾を望む風景を写して終わる。この映画の英語題《Hong Kong Hong Kong》の方が、実は映画の本質をよく表しているようだ。


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