阿嫂(姐御〜ANEGO〜)

曾志偉(エリック・ツァン)、黄秋生(アンソニー・ウォン)、任達華(サイモン・ヤム)、方中信(アレックス・フォン)、林嘉欣(カレーナ・ラム)、劉心悠(アニー・ラウ)、劉燁(リュウ・イエ)、元華(ユン・ワー)、謝君豪(ツェ・クワンホウ)、廖啓智(リウ・カイチー)、羅仲謙 
黄精甫(ウォン・チェンポー/ウォン・ジンポー):監督


洛華(林嘉欣)が、夫を殺した阿九(廖啓智)の一家を皆殺しにしようという刹那、百徳(曾志偉)は阿九のよちよち歩きの娘・菲比(後の劉心悠)を妻に娶ると言って救った。百徳は菲比を可愛がり、仲間たち(黄秋生、任達華、方中信)も娘の為には金に糸目をつけず、大切にした。
菲比が少女になり、百徳の周辺がにわかにきな臭くなってきた。何ものかに狙われる百徳、平和に見えた周囲に危険がせまっている・・・・。


ストーリーはあだ討ちと勢力争いというごく普通の黒幇片だ。しかし画面にCGで花が咲くタイトルバックからしていやな予感。これが的中。これを見たら「香港人怒るだろうな〜」というのがまずの感想(笑)。
いくら青春映画の手法で、光に満ちた黒幇片を撮るといっても、これだけのメンバーが出ていれば、誰でもが想像する映画や画面がある。しかしそれはことごとく裏切られる。いい意味で裏切られるならいいのだが、肩透かしをくらう。どう解釈していいのか分からない。どこでカタルシスを感じていいのか分からない。
確かに《福伯》や《江湖(ベルベット・レイン)》を思い起こさせるスタイリッシュな映像もある。特にスローモーションは得意とするところだろう。けれん味たっぷりだが、それはそれでいい部分でもある。曾志偉、黄秋生、任達華、方中信の4人関係は、高校生時代の乱闘を見せることで表現し、曾志偉の足の怪我でさえ、上手に処理している。こういうふうに台詞で説明しないのは良いところ。しかし途中でアニメを見せられたり、画面が横倒しになって、人間が上から下に歩いたりすると、やはりやりすぎ。どうして普通に撮れないのか。へんな小細工をしなければ、画面に緊張感を与えられないのか。時に杜琪峰を意識しているんだろと思うこともしばしばだが、当然かなうはずはない。


曾志偉、黄秋生、任達華、方中信らは、きちっと自分達の役を演じてはいる。浪費とも言える使い方で、これにも不満が残る。劉燁の役は、大陸出身で、広東語が片言、無口のボディーガード。彼でなくてもいいような気がして、ここでも浪費。
林嘉欣の役は高島礼子にでも演じて欲しいような役なので、恵英紅(クララ・ウエイ)あたりのベテランにでもふればいいものを、星皓の映画だからと林嘉欣に与えても、辛いことこのうえない。おかげで、黒がちできつそうな感じのメークのぽっちゃり丸顔で「ここは私が仕切らせてもらうわ!」と怒鳴ることになる。似合わない。
野獣の中に置かれた可憐な白ウサギちゃんを演じる新人の劉心悠は、これが意外に老け顔で、純真無垢の少女に見えない。仕方なく妙に子供っぽく演出することになる。それでアニメなのかもしれない。このあたりもかなり不満だ。さらに台湾出身で広東語が下手。おかげて米国帰りで広東語をしばらく話していないと台詞で言わせるはめになっている。台詞で説明しないはずなのにだ。


いつもと違う黒幇片を撮ろうという心意気は感じるし、ところどころに面白いものもあるが、なにより問題なのは、これだけの豪華キャストをそろえていながら、豪華キャストを見た気がしないこと。ああもったいない、もったいない。
2005.8.4@旺角百老匯


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