《殺破狼》と甄子丹

クリスマスの大作が上映される前、このところ話題の映画が不足している。《殺破狼》だけが人が入っている。この香港製男性警察ものは、公開時はそれほど成績が好くなく、さらに公開後どんどん成績がよくなるということもなかった。しかし不思議な事に、ここ数週間まあまあの成績を維持しており、すでに600万香港ドルを越えている。
《殺破狼》の興行成績にはねばり強さがある。それはカンフースターで武術指導の甄子丹(ドニー・イェン)のアクションがすばらしいという口コミが、アクション好きを引き付けているからだ。女性の観客の中にもアクションがすばらしいと話している人がいる。この映画は葉偉信(ウイルソン・イップ)監督で、本来の主役は任達華(サイモン・ヤム)だが、甄子丹が多くの観客を引き付けているのは否定できない。甄子丹は、映画の最後になってはじめて大立ち回りを演じるが、彼と呉京ウー・ジン)、洪金寶(サモ・ハン)との2つの決闘場面は、痛快極まりない。まさに使い手がしのぎを削る戦いだ。
甄子丹はすでに出色のアクションスターとして認識されており、20年前にも主役を演じているが、それほど人気が出なかった。しかし彼には実力があった。今年になり《七剣》と《殺破狼》でやっと光があたり、さらにアクションにはすばらしいものがある。この2本は甄子丹の力によって荒れ狂っているといえる。
1963年広東生まれの甄子丹は、母親が武術の素養があり、子供の時にアメリカへ移住、ボストンで大きくなった。小さいときから武術とピアノを習い、19歳、北京武術学校で訓練を受けている時、袁和平(ユエン・ウーピン)に見い出され、香港映画の世界に入った。1984年から、甄子丹主演または出演、袁和平監督で《笑太極(ドラゴン酔太極拳)》《情逢敵手》《特警屠龍(タイガー刑事)》《皇家師姐4直撃證人(クライム・キーパー 香港捜査官)》《洗黒銭(タイガー・コネクション)》を撮っている。
92年、徐克(ツイ・ハーク)の《黄飛鴻2男兒當自強(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱)》(袁和平:アクション監督)では悪役を演じ、李連杰ジェット・リー)とのアクション場面はすばらしかった。さらに于榮光(ユー・ロングアン)と出演した袁和平監督《鐵馬[馬留](ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 外伝 アイアンモンキーグレート)》も出色だった。この後、彼は自ら監督主演し《戦狼伝説/新唐山大兄(ドラゴン危機一発'97)》《殺殺人・跳跳舞(バリスティック・キス/ドニー・イェン COOL)》を撮ったが、これらは映像はすばらしいが、ストーリーの処理は混乱していた。最近になり《英雄(HERO)》の李連杰との剣比べは刺激的で、黄真真(バーバラ・ウォン/ウォン・ジャンジャン)とは《見習黒[王攵]瑰(ツイン・ローズ)》を共同監督している。来年は彼が新しい映画で正式にピアノと武術を合わせて、文武両方の才能を見せてくれるのに期待したい。by 2005.12.4「明報」石[王其]記

《殺破狼》口コミじわじわヒット。さてこの文章の中で気になったのは、やっぱり香港では相変わらず、アクション映画は男子が見るものというカテゴリーに括られているということだ。日本なら李連杰や甄子丹にはたくさんの女性ファンがいるし、アクション映画好きの女性も多いと思うのだが、香港ではアクション映画を褒めそやす女性は、未だに少ないのか・・・。
甄子丹のピアノの腕前は梁詠[王其](ジジ・リョン)、古天樂(ルイス・クー)の《恋情告急》で見られる。この甄子丹、なかなか可愛いくて、こういう役も出来るのかと感心した記憶あり。