《以和為貴》公安が突出

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id:hkcl:20060508の続き)《黒社会》シリーズは続くのだろうか? 私にも分からないが、当然続きがあるようにみえる。なぜなら第2集《以和為貴》でも話しは終わっていないからだ。最後、大陸の公安が古天樂(ルイス・クー)に向かって、組みの"長"をひとりに固定させ、選挙をさせないように圧力をかけるが、これは達成されるかどうか分からない。劇中、現在の長である任達華(サイモン・ヤム)も、引き続き"長"の地位を得ようとして、血なまぐさい戦いが繰り広げられる。もし古天樂が選挙制度を取り止め、永遠に地位を譲らないとすれば、また生きるか死ぬかの戦いが巻き起こるだろう。
第2集の古天樂は、本来、ヤクザ家業から足を洗い、堅気の商売をしようとしている。しかし大陸の政府関係者に翻弄され、彼はますますヤクザの道をまい進することになる。《以和為貴》は香港の商売が大陸を頼みにし、中国に服従しなければならないという現実性が明確に見て取れる。劇中、古天樂が話す香港式の普通語は、大いに笑いを取る。しかし今回彼は無謀なことはできない、商売のために身内を傷つけ、大陸人の策略にはまり愚行をくり返すだけだ。
尤勇演じる大陸の公安は、硬軟取り混ぜて香港の主役を取り込み「陰険」だ。彼は《以和為貴》で最も突出した役で、演技もうまい。この映画では、彼をことさら醜く描くことはせず、この公安のやり手を「愛国の忠臣」の典型として描いている。欲深くも腐敗もしておらず、智恵をめぐらし陰謀を企んでいる。
彼の論理に従えば、香港のヤクザの選挙は、ただ争いと殺しあいを引き起こすだけ。選挙などしないほうがよく、"長"がきまっていれば、穏やかに協力できると思っているのだ。
いくらか牽強付会ではあるが、《以和為貴》は、政治上の風刺を含み、香港のヤクザ選挙を描く事で、中央が香港の民主主義を許さない状況を描いているといえる。香港でこのような映画を撮ったことは、創作の自由度が高いとみなせるだろう。杜琪峰が敢えてこのようにしたことは、刺激的な考えだ。もし第3集を撮るなら、黒社会と政治についてより深く取り組んで欲しいと思っている。(意訳あり)by 2006.5.9「明報」石琪記