大地兒女

《大地兒女》樂蒂、陳厚、胡金銓、高寶樹
胡金銓(キン・フー):監督 1964年 邵氏 DVD


日本軍が村に近付くころ。絵書きニ哥(陳厚)は相棒の三叔と広告(仁丹の広告を壁に書いている)を描き稼いでいる。ある日、わけ有りの女性・荷花(樂蒂)を助け自宅に連れて帰った。心根の優しい彼女に惚れ、2人は結婚することになる。ところが祝いの席に彼女の元の雇い主がやってきて、彼女は大金を叩いて買ってきた女だと主張し、連れ帰ろうとする。そこへ警官がやってきて、悪徳雇い主を連行していく。
日本軍が村にやってきた。ニ哥は「日華親善」と壁に書くよう命令される。日本人にあったら、頭を下げてお辞儀せよと言われ、抗日分子と決めつけられると痛めつけられる。村人はびくびくしながら暮らしている。日本軍の横暴に、村人は少しずつ密かに村を抜け出し、山にこもり「勇撃隊」となっていった。「勇撃隊」は徐々に人数を増やし訓練し、日本軍に立ち向かう日がやってきた。


胡金銓初監督作品。抗日戦争ものと言われている。たしかに抗日戦争を描いていて、日本の軍人はたしかに非情な人間だが、ことさら醜く描くことはしていない。策略を巡らし、罠をしかけ、力だけではかなわない日本軍にいかにして、ごく普通の民が挑んで行くかというところに、重きが置かれている。主人公が絵書きというのもバタ臭い。そんなこともあり、出てくる人物は日本軍と中国の民だが、西洋映画のようなモダンな感じがする。特に銃撃戦の場面など、まるで西部劇でも見ている気分になる。そいう意味でとても面白い。
後の《侠女》や《龍門客桟》《空山霊雨》などでもよく登場する、見方と見方が意味ありげに眼で合図を交わしたり、見つからないように隠れながら敵をつけるといった特徴的な人物の動きが、すでにこの作品でも見られるのが興味深い。胡金銓映画の女性たちは、《侠女》に代表されるようにクールで男と同じ役割を担って登場してくることが多い。この映画の樂蒂も芯が強い女性として描かれているが、勇撃隊と日本軍が戦っている間は姿が見えなくなってしまい、最後の最後に再び登場してくる。まだ男と同じ役割を担うまでには到っていないようだ。


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