香港映画10年の生死存亡

10年前1996年の香港映画を振り返ってみると、今日と違いは強烈だ。生産量、興行成績はどれも現在よりもいい。しかし当事、香港映画の周りには危機が潜んでおり、風雨に揺れ動いていた。香港映画が繁栄から衰退へ変わる分岐点は1995年。長い間、香港映画が映画興行成績の1位を記録していたのが、アメリカのスピルバーグのCGによる大作《ジュラシックパーク》によって撃ち破られたことで、長年の香港映画優位の時代が終わりを告げた。
1966年になり上映された香港映画は90本。数十年来で初めて100本を割った。まさしく最盛期から下降をはじめたのだ。しかし96年の香港映画は興行成績全体の半分を稼ぎ、いくつかの固定映画館を持っており、全体的に見るとまだ西洋映画に圧倒されてはいなかった。
96年成績のよかった香港映画は少なく無い。成龍ジャッキー・チェン)主演《警察故事4之簡単任務(ファイナル・プロジェクト)》は5700万香港ドル周星馳チャウ・シンチー)の《大内密探零零發(008 皇帝ミッション)》と《食神》などどれもヒット。またこの年、新時代の江湖片(ヤクザ映画)のブームがやってくる。劉偉強(アンドリュー・ラウ)監督《古惑仔》が続けて数作撮影され話題になる。さらに査傅誼が《旺角揸fit人》シリーズを、新進監督の葉偉信(ウイルソン・イップ)が《旺角風雲》を撮り、馬偉豪(ジョー・マー)が新しいタイプのラブストーリー《百分百感覚》を撮り人気を得た。
この年、映画界は黒白両方の旗(ヤクザものもそうでないものもの意味)が降られていた。警察ものでは成龍の映画が興行成績1位になった以外に、《衝鋒隊怒火街頭》と《三個受傷的警察》、《飛虎(ファイナル・オプション)》で王敏徳(マイケル・ウォン)が突然人気になった。リアリティのあるラブストーリーにもよい作品があった。陳可辛(ピーター・チャン)監督、黎明(レオン・ライ)、張曼玉マギー・チャン)主演の《甜密密(ラブソング)》は評判がいいだけでなく、興行成績もよかった。
10年前は97年香港返還の1年前であった。先が予測できない時であったが、香港映画は未だ活力と創造性を失っていなかった。
その後10年、時が移り、幾多の困難があり、人の心も文化娯楽のスタイルも大きく変化した。今はまさに生死存亡の瀬戸際だ。幸いにして国を跨いでの合作、小資本の独立系、国際的賞の受賞などがまだ後を絶たない。by 2006.6.10「明報」石琪記

こうやって並べると96年、印象に残る映画がいっぱいある(もちろんその影にたくさんのダメ映画もあるのだけど)。
今年、5、6月の香港映画には期待できない。5月はid:hkcl:20060609にも書いたように、西洋映画の大作を避けて辺境映画ばかり。6月、今度はサッカーのため、やはり期待できそうな香港映画は上映をひかえており、6月終わりから7月になってようやく上映されるものが多い。
現在香港中、サッカー、サッカー。ウチで見る人もいるだろうが、スポーツバーでテレビ生中継、ショッピングセンターでも真夜中3時ごろにテレビ生中継するところがある(そんなことするのは観塘のapm)。こんな騒ぎのなか、映画を見に行く人は明らかに少なくなるので、6月の映画館はさぞかし空いていることだろう。
そういえば、6月6日に世界同時公開された《オーメン》、あまり宣伝してないような気がする。
香港、みんながすぐ同じものに飛びついて、あっというまにブームになって、終わればすぐに忘れてしまう。そして次の何かがブームになる。そのスピードが早すぎる。たぶん先日来、新聞をにぎわせている「巴士阿叔」も、サッカーが始まって、すでに忘れられていることだろう。