鬼域(リサイクル 死界)

《鬼域》李心潔(アンジェリカ・リー)、周俊偉(ローレンス・チョウ)、李彩華(レイン・リー)、劉兆銘(ラウ・シウメン) 
彭兄弟(パン・ブラザーズ):監督


以下ねたばれあり注意。
小説家・定言(李心潔)の作品が原作になった映画の製作発表会が行なわれた。作品には自分の恋愛が投影されているのか?と質問される定言に、編集担当(周俊偉)は助け舟を出し、彼女の次回作のタイトルは「鬼域」だと発表し、記者たちの質問をはぐらかした。「鬼域」、まだタイトルしか決っていない作品だった。
「鬼域」を書きはじめた定言は、部屋の中に異常なものを感じる。ある夜、外出しようと部屋を出た定言は、廃虚のような不可思議な空間に迷いこんだ。


ホラー映画という売りだが、少し気持ち悪いところはあるが、実際たいして恐くなく、私の中ではホラー映画ではなかった。定言が迷いこんだ空間は、彼女の小説がつくり出した空間。それも彼女が書き損じてゴミ箱にすてた文章がつくり出した世界だった。そこには見捨てられたおもちゃや本や人々がかなしく存在していた。
英語タイトルは《re-cycle》だが、映画の中でこれらはリサイクルされることはなく、いつまでもこの場にい続ける存在として描かれている。そして最後、定言が自分の部屋で目覚めると、そこでは他人が自分に代わり小説を書いている。小説家でさえもすぐに代わりがいるというアイロニー。ここがいいたい為に、これまでのすべての場面を用意したのなら、やはり最後がちょっと弱いように感じてしまう。それは、捨てられたものたちに使われた大量のCGが、見終わったあとに強く印象に残ってしまうからだ。しかし頭で考えると、主要人物は、全員が誰かに「捨てられ」ているという構図はとても面白い。定言が出会う年寄りも、子供も、誰かに「捨てられた」「見捨てられた」「忘れられた」存在だ。そして定言自身も・・・。
CGも立派だし、話も興味深いが、CGに気を撮られ過ぎたかも。あと少し。2006.7.2@旺角百老匯


■□06年に見た映画一覧□■