導火線(導火線 FLASH POINT)

《導火線》甄子丹(ドニー・イェン)、古天樂(ルイス・クー)、范冰冰(ファン・ピンピン)、鄒兆龍(コリン・チョウ)、呂良偉(レイ・ロイ)、釋宇行、鄭則士、許晴、夏萍、林國斌、羅蘭 
葉偉信(ウィルソン・イップ):監督


刑事の馬軍(甄子丹)は、検挙率は一番だが、手入れに行った先々でヤクザものを殴りたおして重傷をおわせている。いま狙いをつけ、臥底を身辺に送りんでいるのはベトナム(だったと思うが)からやってきた渣哥(呂良偉)、Tony哥(鄒兆龍)、虎哥(釋宇行)の3兄弟だった。


主人公の名は馬軍で、前作《殺破狼》を引き継いでいるが、当然《殺破狼》より前の話しでなければならない。《導火線》導入部分の馬軍の性格付けでは、《殺破狼》で馬軍がかつてチンピラ(洪天明)をなぐって廃人同様にしていることを思い出す。


甄子丹のアクションを見せる映画としては十二分にその使命を達成している。香港映画ではあまり見た事の無い格闘技がつぎつぎと繰り出される。レスリングを思わせるからみや関節技など豊富。特に、最後の甄子丹vs鄒兆龍はすごいのひとことで、会場から「うぉ」とか「おー」など、驚きの声が漏れていた。2人のシーンは息がつまるし、長い(別の見方ではかなり笑うのだが)。なかでも2人がからまって2階から下へ、頭から落ちるシーンには、私も思わず声を出しそうになった。
呂良偉の怪演もなかなかで、あの濃い顔がふてぶてしさに溢れ、ぬめり系。刑務所内で踊るところなんぞ、サイモン様がレイ・ロイかってぐらいステキ。


しかし葉偉信映画としては破綻しているだろう。ストーリーはあってなきがごとし。甄子丹がだたただ逮捕するために戦っていくことだけが描かれて行く。古天樂との友情もストーリーの根幹を成すまでに至っていないし、古天樂と范冰冰の恋愛も映画に少々色を添えるぐらいでしかない。何よりにこれまでの葉偉信映画の根底に流れていた「父の不在」や「疑似家族的なつながり」は登場してこない。わずかに馬軍には母(羅蘭)が1人いるだけで、父はいないらしいと分かるのと、3兄弟にも母がいるだけ。全編、甄子丹印であって、葉偉信の影はほとんど見えてこない。そこが《殺破狼》が好きな私としては大いに不満の残るところ。


どうでもいいことだが、「渣」(じゃー)と「Tony」で、トニー・ジャーってふざけてる(爆)2007.8.4@新寶戲院&8.12@旺角百老匯


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《導火線》のロケ地についてはココを参照。