出埃及記(出エジプト記)

《出埃及記》任達華(サイモン・ヤム)、劉心悠(アニー・リウ)、張家輝(ニック・チョン)、温碧霞(アイリーン・ワン)、余安安(キャンディス・ユー)、邵美琪(マギー・シュウ)、單立文(シン・ラップマン)、詹瑞文(チム・ソイマン/ジム・チム) 
彭浩翔(パン・ホーチョン):監督 


ごくごく普通、どちらかというとうだつの上がらない警官(任達華)は、ある日女性トイレを覗いてビデオに撮っていた男(張家輝)の取り調べをすることになった。すると男は、「自分はトイレで女性が用をたすところを覗いたのでも、隠し撮りをしたわけでもない。信じないかもしれないが、思いがけない事故で亡くなるのは全部男だ。それは女性たちの秘密の組織があって、分からないように偶然の事故を装って男を殺しているのだ。その証拠をつかもうとトイレを覗き、ビデオに撮った」と主張した。ところが夜中になってその調書がどこかに消えて無くなってしまった。再び男から事情を聞くと、前とはまったく違って「自分は好色で、トイレを覗いて、ビデオに撮った」と言い張り、ころりと供述を変えてしまった。警官はこの事が気になり、釈放された男を付けてどうして供述を変えたのかと問いつめていく・・・。


前作《伊莎貝拉》とはうって変わってブラックでナンセンス。《買兇拍人(ユー・シュート、 アイ・シュート)》や《公主復仇記(ビヨンド・アワ・ケン)》に近いタイプだが、より洗練されスタイリッシュで無機質で面白い。間の取り方や、無機質で乾いた画面は、韓国映画ならありそうな感じだが、香港映画では珍しい。さらに比較的ひいた画面と左右対称の画面、真上からのショットなどで、情緒を極力排しているのも効いている。温碧霞と任達華のベッドシーンでさえ、画面からは情よりも状況だけが語られて行く。


劉心悠の広東語が《阿嫂》からは遥かに進歩しており、北京語なまりも英語なまりもかなり取れていたし、演技も地に足がついて来た感じで、彼女の映画の中では最もいい。時に張栢芝セシリア・チョン)そっくりの顔になる。邵美琪はさすが杜琪峰(ジョニー・トー)映画で養った無表情さで貫禄。少々うるさい母親役は、どの映画でもいつもうわずった一本調子な話し方の余安安。温碧霞(懐かしい)だけが、少し水分を感じる役だが、彼女もいくら色気を出しても肉感的ではなく、どちらかというと無機質。私はいい女でセクシーなのと作っているところが、フェイクでこの映画ではとてもいい。やはり彭浩翔は女優の使い方がとても上手い。


音楽は彭浩翔が大好きだという《嫌われ松子の一生》のガブリエル・ロベルト。モーツァルトも使っていたようだ。なおタイトルの《出埃及記》は聖書の「出エジプト記」のこと。映画のロケ地についてはココを参照。
2007.8.5@百老匯電影中心「香港亞洲電影節2007」 


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