圍城(圍城 〜Besieged City〜)

《圍城》の出演者と監督(中央)鄧徳保、黄孝恩、黄溢豪、蒋祖曼 
劉國昌(ローレンス・ラウ/ローレンス・アモン):監督


天水圍を舞台に、あれている学校、いじめ、非行、万引き、家出、家庭問題、黒社会との接触、麻薬など青少年が抱える問題を描く。
弟は学校ではいじめに合い、家庭では父親に殴られているが、兄は見て見ぬ振り、ただただ自分は勉強してどうにかここから抜け出そうと思っている。父親(血がつながっていないと思われる)に性的関係を迫られ妊娠、出産してしまっている少女・Panadol(黄孝恩)は、子供を姉(蒋祖曼)に預けて遊びまわっている。Panadolは家出した弟と知り合う。弟は唯一自分の存在を認めてくれるPanadolたちの不良仲間と万引きをしたり、無人の家で寝泊まりし無為な日々を送るようになる。ある日Panadolはチンピラの柴哥を知るが、柴哥が監獄に入ったのを機に、Panadolがクスリを友人たちに売るようになる。ところがPanadolらが売っていたクスリの価格が通常より安かったため、市場は混乱、ヤクザから目を付けられることに・・・。


出演者のほとんどが素人だが、Panadol(すごい名前だけど)を演じている黄孝恩は、気の強い、いかにも不良少女な役にぴったりな風貌。よく探してきたものだ。今年の金像奨新演員奨にノミネートされている(この作品、昨年駆け込みで数回上映してノミネート資格を確保している)。彼女の姉を演じている蒋祖曼はインディペンデント系の映画に何本か出演している。私の記憶に残っているのは昨年の香港亞洲電影節で上映された《粤・歸・縁》(id:hkcl:20061006)、今回の電影節でももう1作彼女が出演する映画が上映される。
天水圍はこのところ香港の社会問題になっている地区で新界にある。新移民と言われる人が比較的多く住み、香港人の夫に若い大陸人の妻の組み合わせも多いという。また所得も総じてあまり高くない。
映画全体に絶望感がただよっている。特に最後、監督自身はそれほど暗い終わり方ではないと話していたが、絶望のだめ押しで、見終わったあと、かなり沈鬱になる。
2008.3.22@香港国際電影節(文化中心)


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