無野之城

右から劉國昌、雲翔、董敏莉、棒球隊。梁宇聰、香子俊、董敏莉(モニー・トン)、林苑(ジア・リン) 
雲翔・劉國昌(ローレンス・ラウ/ローレンス・アモン):監督


香港の野球選手たちが自身を演じている。香港ではマイナーなスポーツの野球、選手たちは別に職業を持ちながら、台湾から来たコーチと練習に励んでいる。他のことはいいが、野球だけはあきらめない。野球をすることが生きている理由。そんな選手たちの姿を浮き彫りにしていく。ドキュメンタリーではなく、選手たちから聞き出した話しを元にフィクションを加え脚本が書かれている。「無野之城」の野は野球のこと。映画の主題は「Lost」「失落」だそうだ。


練習が辛いとか練習時間を捻出するのが大変だというような苦労話しではない。仕事して、恋して、仲間と酒を飲み、喧嘩したり、仲間に嫉妬することもある。普通に生活を送っているが、自分がもっともやりたいものは野球なのだという、普通のこと。自殺志願の女性(董敏莉)がいう「私には生きている理由がない。あなたはある?」。この女性は監督の投影で、監督はいつも自分が生きている理由を探していると話していた。
劇中に挿入されるのは陳百強や張國榮や梅艶芳、羅文などのヒット曲を選手たちが歌っているもの。これらはみな選手たちが好きな歌だそうだが、みな故人。


選手たちの全裸シャワーシーンが3か所ぐらいあり、下半身が写っているので、さすがに終わってから質問が出ていた。監督の1人で脚本を書いた雲翔は「服を着たり飾ったりしない選手たちの本当の姿、裸こそが本当の姿だという意味」と話していた。さらに「商業映画として上映することはまったく考えてなかった」と。
チーム監督は台湾からやってきた人だが(本当のチーム監督)、この人がかっこいい。映画では香港に来てすぐに彼女を作っている。監督は「映画は事実とは違う。僕にはもっといっぱいガールフレンドがいる」と言っていた(笑)。バンドをやっていたり、俳優(モデル?)をやっているものもいるらしいが、出演者(選手たち)はみなそれなりに演技をしていて、意外にうまい(ひともいる)。メッセージ性はともかく、いままで無かった野球を題材にした映画が香港で作られたということがとても興味深かった。
2008.3.22@香港国際電影節(文化中心)


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