青苔

《青苔》余文樂ショーン・ユー)、[シ先]色麗(ボニー・シン)、樊少皇(ルイス・ファン)、史雪怡、邵音音(スーザン・ショウ)、廖啓智(リュウ・カイチー)、曾志偉(エリック・ツァン)、喬寶寶(キュウ・ボウボウ) 
郭子健(デレク・クォック):監督


少女が香港で働く従姉をたよって田舎からやってきた。そんなころに・・・。
斬媽(邵音音)の息子は母親の誕生日祝いのエメラルドを持って家に帰ると電話をした。母の忠告を守らず風俗嬢とことに及んでいる最中、アクシデントに見舞われ居所不明に。斬媽は、常々快く思っていない堂哥(廖啓智)のシマから息子が電話をしてきたあと音信不通になったため、かつて堂哥の元に潜入警官として入り込んでいた(実は今も警官)の丈(余文樂)に息子探しを依頼した。丈が堂哥に会ったあと、丈らは身なりは浮浪者だがとてつもなく強い男(樊少皇)に襲われる・・・。


前作《野。良犬》と同じように見終わったあとは切なさと虚しさと少しの希望が残るが、前作のロマンティズムは少し姿を消していて、全体はハードな印象。前作の少年に代わり、少女(史雪怡)が、暗く湿った苔が生えるような世界にかすかな光をもたらしてくれる。少女を救おうとする2人が戦う様は、少女の存在が2人にとってまるで"希望"であるかのようだ。


監督が住んでいた深水[土歩]を舞台に、息子を思う母の心とヤクザの争いと東南アジア人の無謀な強盗が絡んで物語は進んで行く。映画が始まってすぐ、画面は大いに混乱している。混沌とした中から物語がだんだんと見えてくる。全編ほとんど夜でよく動くカメラが暴力的なシーンを作り出す。余文樂はいったい警察なのかチンピラなのか分からないほどさやぐれているが、この役が彼がいままで演じたどんな役よりぴったりしている。余文樂にはこういう役の方が似合う。監督のキャスティングは正しい。浮浪者を演じる樊少皇、服も顔も真っ黒で表情はほとんど見えず。母を思う息子であり少女の保護者たろうとする純粋な心を持つ悲しい殺し屋。前作に続いて起用の邵音音、今回も気の強い名前からして怖そうな斬媽。しかし息子を思う気持ちは普通の母のそれ。廖啓智は強面で、これまた上手すぎる。前作の回転木馬にあたるのは今回は飛び出す絵本。やっぱり監督はロマンティスト。
2008.5.29@新寶戲院


■□08年に見た映画一覧□■