金錢帝國(金銭帝国)

《金錢帝國》陳奕迅(イーソン・チャン)、黄秋生(アンソニー・ウォン)、梁家輝(レオン・カーファイ)、方力申(アレックス・フォン)、林保怡(ボーイ・ラム)、徐子珊(ケイト・チョイ)、劉洋、孟瑶(ナタリー・マン)、鮑起静(パウ・ヘイチェン)、呉志雄(ン・チーホン)、王天林(ウォン・ティンラム) 
王晶バリー・ウォン/ウォン・ジン):監督

 
1970年代、警察には汚職がはびこり、警察とヤクザは手をとりあっっていた。クラブやバー、風俗営業店や不法賭博場など、あらゆる娯楽場から巻き上げた金は、警察とヤクザの中間に位置する猪油仔(王晶)の元に一旦集められ、毎月香港のほぼすべての警官に分配されていた。
ある日、警察の香港人トップ・Lak哥(梁家輝)は、検挙率の悪さにかんしゃくを起こした。部下の火麒麟(黄秋生)は、罪のない大学生・邦(方力申)にすべての罪をなすりつけようとした。邦の母(鮑起静)は、従妹の夫の警官に頼みなんとか邦を釈放してもらおうとするが、火麒麟は聞き入れてくれない。従妹の夫は猪油仔に助けを求め、やっとのことで邦を釈放してもらう。警察内ではげしく殴られた邦は、釈放される時、「いずれ全員を訴えてやる」と言い放った。
Lak哥の部下・細九(陳奕迅)は、サッカーの試合でいい球を渡してLak哥にシュートさせたのがはじまりで、Lak哥に重用されるようになっていった。さらにLak哥の浮気相手の女性を妻に迎えたのをはじめ、元猪油仔の女など9人の妻の面倒を見ており、[竹/肖]箕灣の署長になっていた。ある日、Lak哥の元にヤクを売っている玫瑰(劉洋)という女性が尋ねきて、4人で仕切っているヤクのマーケットに自分も加えて欲しいと頼んでいった。
細九が息子と食事に出かけると、店で玫瑰らも食事をしていた。そこに突然暴漢がやってきて玫瑰を狙った。細九は拳銃を抜き応戦するが、撃たれる。その間に玫瑰が相手を撃ち殺すが、細九の手柄にして立ち去る。これがきっかけで、細九と玫瑰はつき合うようになる。
そのころ、警察の汚職に頭を悩ませたイギリス政府は新しい上司を送ってくるが役に立たず、ついに警官の汚職を取り締まるために「ICAC」(廉正公署)を設立させた・・・・。


今年はICACが誕生して35年。電影資料館では、ICACが製作した許鞍華(アン・ホイ)と嚴浩(イム・ホー)のテレビドラマ「ICAC」を上映した。この《金錢帝國》も《ICAC: 査案記》同様に、ICAC誕生の理由である警察の汚職を追っていく。
脚本と監督の王晶は巧妙。本来なら警察の汚職や不正を扱えば大陸では上映できないだろう。しかしこれを過去の事としさらにICACの誕生で警察の汚職を取り締まるという物語にすることで、警官はどんな悪辣な行為も出来てしまう。劇中の警官はヤクザよりヤクザだ。黒社会を描かずとも黒社会的なものを描いていく。さらに劇中、陳奕迅演じる細九は、警官の中でもよい人として表現されているが、その彼は最後には罪を認め、9人の妻の中でもっとも地味だが細九を思っている老四と一緒にまっとうに生きて行こうとする。こういう結末を説教くさくなく作ってしまう。
いま香港映画は、インディペンデントを別にすれば、大陸市場を考えずには作れない。大陸の規制を受けず、クライムサスペンスを作るのは至難の技だと思う。しかし香港の映画制作者たちは、けしてへこたれることなく、知恵を駆使して脚本を作っていく。その1つがこの映画だと思う。
2009.4.30@新寶戲院

  
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