小白菜

《小白菜》李麗華、黄河、羅維、鍾情、馬力 
張善琨・易文:監督 1955年 新華 
モノクロ 国語 日本語字幕付き


清末四大疑案の1つと言われている「楊乃武與小白菜」の故事による。
小白菜は父母はおらず、親戚の叔母に連れられ、年端もゆかぬ頃にある家に嫁として貰われる。小白菜(李麗華)と夫は仲睦ましく小さな豆腐屋を営んでいた。ある日、夫が熱を出したため、小白菜は隣の屋敷の楊乃武(黄河)に診察を頼む。楊乃武は快く応じ、夫を診てやり薬を処方してやる。それからほどなくして小白菜が病にかかったため、今度は小白菜が楊乃武に診てもらった。楊乃武は美人と評判の小白菜を一目見て惹かれ、小白菜も楊乃武にときめきを感じた。
豆腐屋の妹(鍾情)がたびたび、楊乃武の筆跡の処方箋を持って薬を買いに来るので、薬屋は妻ある楊乃武と夫のある小白菜は関係があると勝手な噂をたてる。さらにある日偶然に出会った2人を見た村娘が薬屋に言いつけ、噂はさらに大きくなり、楊乃武の父の知れるところとなる。楊乃武は小白菜に2人は二度と合ってはならないのだと言い聞かせ、さらに小白菜の美しさは災いを呼ぶに違いない、家から出歩かないようにと言い含め、泣く泣く別れる。
ある祭りの日、二階から祭りを見ていた小白菜を判官の息子が見初める。息子は刺繍を頼む商人の振りをして小白菜に近づくが、小白菜はなびいてくれない。夫の留守に押し掛けたところ、夫が帰ってきたため、夫を突き倒して逃げた。夫は怪我をし、驚いた小白菜は誓いを破って楊乃武に助けを求める。判官の息子は自分の行為が知れるのを恐れ、さらに小白菜を我が物にしたいと薬屋に相談する。薬屋は楊乃武の処方箋を改ざん、それを飲んだ小白菜の夫は亡くなり、小白菜と楊乃武が姦通と夫殺しで投獄される。2人は冤罪だと言い続け、さらに楊家も裁きに不服を訴え続け、裁きの場は地方からついには京にまで到った・・・。


劇中、楊乃武と小白菜は清い間柄として描かれているが、2人の出会いは最初からエロティシズムが濃厚に漂っている。見るものを魅了するファムファタルに相応しい李麗華は、楊乃武の前でだけ夫には見せない恥じらいとはにかみを見せる。もうそれだけで十分に罪深い。先日の座談会(id:hkcl:20090412)でも言っていたが、楊乃武と小白菜の出会いは、2人を隔てるものが最初は木の扉、次は布、その次は透き通った布、そして手と手が触れ、初めて顔を見るという具合に距離がどんどん近づいていく描写が細かい。さらに遡って、大人の小白菜の登場場面も小白菜は最初後ろ姿で登場し、歌を歌っている。臼を挽いたり、家事をしたりする小白菜が最後に観客に向かうころ、観客は十分に小白菜の美しさを期待してまっている。そこに李麗華の笑顔が登場するという具合で観客のじらし方が非常に上手い。
その後も、楊乃武を家に招ねき食事をする。楊乃武は贈り物を渡す。しまいには楊乃武は小白菜に「あなたは特別だ」と十分恋の告白をさせる。別れ間際に楊乃武は小白菜にねだられ玉を贈る。細かい描写の積み重ねが2人の心の近づきを描き出して行く。しかし最後に無罪放免になった小白菜は、やはり2人は会ってはならないのだと、出家してしまうところで悲恋は極まる。
2009.5.10@香港電影資料館(兒女情長:易文電影)


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