殺人犯

《殺人犯》郭富城(アーロン・クォック)、張鈞甯(チャン・チュンニン)、張兆輝(チョン・シウファイ)、何超儀(ジョシー・ホー)、錢嘉樂(チン・カーロッ)、陳觀泰(チェン・カンタイ)、黄又南(ウォン・ヤウナム)、譚真一 
周顯揚(ロイ・チョウ):監督


刑事の泰哥(陳觀泰)は、全身を電機ドリルのようなもので傷つけられたうえ、何者かにビルの7階から投げ落とされた。その同じビルの7階では刑事の凌光(郭富城)が気を失って倒れていた。病院に運ばれた凌光は意識を取り戻すが、事件前の記憶がすっかり抜け落ちてた。
凌光らは、このところ連続して起こっている電機ドリルを使った残忍な殺人事件の犯人検挙に全力をあげている最中だった。殺人の起こった日は、偶然にも凌光の非番の日に当たっており、さらに今回の泰哥の一件から、凌光が犯人ではないかと疑われていた。同日の記憶を失っている凌光もまた自分が犯人なのではないかとおびえ、不安定な精神状態に陥っていった・・・。


いったい犯人は誰なのか。殺人の理由は何なのかと探っていくミステリー。始まってしばらくは、心理的ミステリーで少し期待させるのだが、犯人が分かった瞬間に「それなないだろう!反則!」。これが小説なら、横溝正史ばりの怪奇譚だ。現代香港の風景の中にこの怪奇譚を持ち込むと奇妙きわまりない。1940年代ぐらいの設定なら、意外に面白かったかもしれないのだが。
ただし、いままで見たことのない表情を見せる郭富城はいい。少しオーバーアクトなところはあるが、本来なら愛くるしい大きな眼が、不安な心を現し、疑心暗鬼におののいて、狂気へ変わって行く。郭富城以外の出演者たちがいまひとつ生きていないのは残念。錢嘉樂も黃又南も出番は少ししかない。張兆輝と郭富城の関係ももう少し詳しく描いてもいのでは。張鈞甯は可もなく不可もなし(張鈞甯は普通話のままで吹き替えなし)。気になったのは郭富城の上司役の俳優(名前は分からない)が、普通話だったこと。これは広東語に吹き替えて欲しかった。
広告プロモーションの大量投下で、良質のミステリー小説を読むように、先へ先へ読み進んで真実を知りたくなるような焦燥感を映画で感じられるのではと期待したのだが、残念ながら無理だった。
2009.7.9@旺角百老匯


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