竊聽風雲(盗聴犯〜死のインサイダー取引〜)

《竊聽風雲》劉青雲ラウ・チンワン)、古天樂(ルイス・クー)、呉彦祖ダニエル・ウー)、張静初(チャン・ジンチュウ)、方中信(アレックス・フォン)、林嘉華(ラム・ガーワー)、陳偉霆(ウイリアム・チャン)、李子雄(レイ・チーホン)、王敏徳(マイケル・ウォン)、歐錦棠(スティーヴン・オウ)、陸詩韻(シャロン・ロク)、朱慧敏(クイニー・チュウ)、方平(ヘンリー・フォン/フォン・ペン)、鄒凱光(マット・チョウ) 
荘文強(フェリックス・チョン)・麥兆輝(アラン・マック):監督


(注意:ねたばれの可能性あり)刑事情報科は、不正株取り引きの疑いで「風華國際」を監視するため盗聴と盗撮装置をしかけた。24時間の監視を担当するのは、光(方中信)、祖(陳偉霆)、俊(劉青雲)、真(古天樂)、祥(呉彦祖)ら。
ある夜、風華國際の羅(李子雄)は、社長室へ連れ込んだ女性(朱慧敏)へ「明日、株価が上がると告げる」。それを聞いた真と祥は証券会社へ急ぎ、自ら株を購入しようとする。俊は2人の行動を阻止しようとするのだが、すでに遅かった・・・。


誘惑にまけた2人はそれなりの理由があった。真(古天樂)は子だくさんのうえ病気の子供を抱え、自らも肝臓がんで余命1年と宣告されており、家族にまとまった金を残してやりたいと考えていた。祥(呉彦祖)は結婚が決まっているが、相手はお金持ちのお嬢様で、何事に於いても義父が取り仕切っており、しまいには稼ぎの少ない警察は辞めて自分の会社へ入るように言われ鬱屈している。
その2人を阻止しようとして失敗、2人に加担してしまう俊(劉青雲)は、「騙すなら徹底的に」というが、自らももう1人騙している人物がいる。それは上司であり友人である光(方中信)。光と妻・婉兒(張静初)は現在別居状態、婉兒は光に離婚を申し出ているが光は応じない。婉兒の不倫相手は実は俊。光は妻の相手が誰なのか気づいておらず、友人である俊に苦しい胸の内を打ち明けていた。


古天樂は、この役のために太り髪に白いものを混ぜるなどの外見をつくりこみ、さらに子持ちで仕事熱心でも、どうやら少し頑固な性格ゆえ出世は望めなさそうな役を好演。ただし最後の登場の仕方はどうなのかとは思う。呉彦祖は、見かけの涼しげなハンサムさが損しているといつも思う。だまっていればそのまま逆玉におさまれるのに、危ない株に手を出して暴走してゆくには、みかけが素直すぎる。劉青雲はみかけは善良そうでも、最後には自分を正当化してしまうという実はかなり悪い奴。この役が一番難しそうだ。方中信は、部下の不正にも友人の裏切りにも気がつかないという、仕事上でも私生活でも勘が悪い役。黙っていると意外に情けない感じがするので、難なくこなしている。思いのほかいいのが、林嘉華と王敏徳。王敏徳にこういう役を当てるのは面白い。


人間の欲望を描くこの映画、多くの人が《無間道》と比べてしまうのだが、《無間道》が欲望から良心さらに人間の生き方にまで踏み込んでいるのに対して、《竊聽風雲》は欲望が物欲の次元で留まってしまっている。さらに《無間道》は全編にわたり車やモールス信号、無線による1対1(警察とヤクザ)の攻防というグルーブ感に満ちているが、《竊聽風雲》では人間関係が複雑になった分だけ、求心力に欠けるけらいがあり、物語りの完成度からいっても残念ながら《無間道》の域にはいたっていない。
もちろんこの映画はこの映画で十分に水準以上で、麥兆輝・荘文強の前作《大捜査之女》よりはいいと思うが、あまり過度な期待はしないほうがいいとは思う。
2009.7.31@旺角百老匯


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