葉問2(イップ・マン 葉問)

《葉問2》甄子丹(ドニー・イェン)、洪金寶(サモ・ハン)、黄暁明(ホアン・シャオミン)、樊少皇(ルイス・ファン)、熊黛林(リン・ホン)、任達華(サイモン・ヤム)、鄭則士(ケント・チェン)、馮克安、羅奔 
葉偉信(ウィルソン・イップ):監督


負傷し密かに佛山から香港へやってきた葉問(甄子丹)は、ビルの屋上を借り武館を開くが詠春拳を習おうというものは現れない。ようやく若者・黄梁(黄暁明)が訪ねてきて、自分が負けたら弟子になってやるとうそぶく。軽く若者をいなすが、若者は腹を立て帰って行く。後日若者はさらに3人の助っ人を連れて葉問のもとへやってきて勝負を挑むが、葉問は4人を相手にまたも軽くあしらう。これを見ていた黄梁は跪いて弟子にして欲しいと頼み、あとの3人もあわせて弟子に取ることにした。そのうちに阿梁はつぎつぎと若者を連れてきて、葉問の弟子は増えるが、貧しい者ばかりで授業料はいっこうに稼げない。そんなおり、1人の男がまたも葉問に勝負を挑んでくるが、葉問はこれも軽くいなしてしまう。
ある日、街で阿梁はくだんの男に因縁をつけられ多勢に無勢でとらわれの身になり、葉問は弟子を引き取りに出向く。葉問は大勢を相手に大立ち回りをみせ、危ういところを金(樊少皇)に助けられるが、男の師傅である洪(洪金寶)に「香港で武館を開くには決まりがある。各武館の師傅と手合わせをして勝てば武館を開いていい」と言われ、葉問は改めて洪をたずね手合わせを頼むのだった・・・・。


これから見る人もいるだろうから、ストーリーはこのあたりで。
さて、前作《葉問》とこの《葉問2》の物語の構図はほぼ同じ。前作では葉問のもとに道場破りよろしく金(樊少皇)がやってくるが、今度は洪(洪金寶)が葉問の敵として登場する。そしてこれを折伏(しゃくぶく)し、新たな敵として前作では日本軍と日本人将校、今回はイギリス人警官とボクサーのツイスターが登場する。さらに前作で林家棟演じる元警官で通訳(敵と自分の中間に位置する人物)は今回は警官の鄭則士、そして葉問の強さを喧伝する黄又南に相当するのが新聞社に勤めた清泉(任達華)の息子である。前作では重要な役だった葉問の支持者・清泉にあたる人物は、新聞社の社主だが、任達華ほどの活躍はなく、物語がよりシンプルに「葉問対敵」にフォーカスされるようになっている。また前作の驚き(甄子丹の乗り移ったような演技なども含め)は減少してはいるが(見慣れたこともあるのと、前作よりさらに葉問が争いを嫌い和を重んじる役になっているため)、葉偉信は物語同様、シンプルに素直に物語りを紡いでいき、ある種の風格さえ感じる成熟を見せている。
アクションシーンは文句なし。ドラマ部分が弱いという見方もあるとは思う。葉偉信はドラマも上手く撮ると思うのだが、くせのあるドラマを撮る人なので、クセがなくなった分だけドラマが不足しているように見えるとも言える。そこはかとなく見える父親の家族への思いは、かつて父親不在の家族ばかりを撮っていた葉偉信(監督自身が父親不在の家で育っているため、父親がどういうものか分からないと言っていた)が、もしかしたら父親の気持ちが分かるようになったもかもしれない(確証はなし)。
それにしてもまったく同じ構造の物語を、よりシンプルにより成熟させ構築してしまった葉偉信とプロデューサーの黄百鳴(レイモンド・ウォン)にはまったくもって恐れ入った。そして、個人的には《葉問》より《葉問2》の方が好きだということも、付け加えておく。
2010.5.1@旺角百老匯


■□10年に見た映画一覧□■