不脱襪的人(仔猫のように抱きしめて)

《不脫襪的人》鍾鎮濤(ケニー・ビー)、張曼玉(マギー・チョン)、陳友(アンソニー・チェン)、顧美華(ジョセフィーヌ・クー)、呉家麗(キャリー・ン) 
陳友:監督 1989年 カラー 嘉禾


白タクの運転手(鍾鎮濤)は、雨の日に乗せた有閑マダム(顧美華)に誘われるとなしに関係を持ってしまう。マダムはタクシー代だと大金を置いていく。運転手はそんなつもりはないと突き返したいが、お金を貯めて正規のタクシー運転手になりたい男は、悔しいながら金をうけとった。男はアパートの屋上のボロ屋に住んでいるが、ある日、階下に女優の卵(張曼玉)が越してくる。彼女を起用してやるという監督が、家を借りてやったのだ。しかし彼女は監督のいいようにはならず、監督の怒りを買って、本番でこてんぱんに他の女優からはたかれる役を与えられる。拝金主義の彼女は、お金持ちが集まるパーティーいそいそとでかけていき、アメリカ帰りの男(陳友)を知り、彼をたよってアメリカに行くこと考えるようになる・・・。


暴動、タクシーのストライキなど1967年の暴動を背景にして描く。《ティファニーで朝食を》の翻案ともいわれおり、張曼玉が衣装をつぎつぎと着替えて見せるのも見所のひとつ。鍾鎮濤は、ずうたいのデカイ駄目男といった風情で、心根はいい人だが、お金がなく鬱屈しており、飛行機の爆音の間に怒鳴って鬱憤をはらしている。鍾鎮濤はこういう役がよく似合う。数年前の自己破産といい、自身もダメンズ風なのかもしれない。
ところでこの映画の原題《不脱襪的人》は直訳すると「靴下を脱がない人」。それは誰のことなのか、そしてどんな意味なのかが気になる。この場合「襪」はくつ下でなくストッキングだとすると脱がないのはマギーで、男の都合のいいようにはならないという意味だろうか。邦題とはまったく意味が違う。この映画、日本では公開されず、ソフトだけ発売されたようだ。
2010.7.17@香港電影資料館「回望回憶」


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