一命三兇手

《一命三兇手》
呉楚帆、白燕、林丹、李清、黄楚山 
李鐵:監督 1959年 白黒 粤語 無字幕 七喜


男(呉楚帆)が警察にやっきて自分は人を殺したと話す。男の名前は黄志民。詳しく事情をきいてみるとどうもおかしいので医者に診せる。警察署長は黄志民が娘の友人の父親らしいと気づき、娘に電話をし、黄志民の娘を病院に連れてくるように言いつける。黄志民は小説家で、「殺妻記」という小説を執筆中。妻に捨てられ、娘と暮らしているが、時々小説と現実の区別がつかなくなっていた。
そんなころ、分かれて久しい元妻・李芳(白燕)が突然シンガポールから香港へ戻り娘に会いにやってくる。李芳はかつて黄志民を捨て、何彪(李清)と一緒になりシンガポールへ行っていた。しかし何彪は、父が亡くなりその遺産を引き継いだ李芳の金銭を自分の商売につぎ込もうと考えていた。李芳はというと遺産を何彪に用立ててやろうとはこれっぽちも思っておらず、捨てた娘を引き取り、その金銭で娘をパリに留学させようと考えていた。


神経症的にしつこくたたみかけていく台詞が秀逸。呉楚帆の父親が心のよりどころである娘に向かって、自分と別れた妻のどちらを選ぶのかと迫るさまは、親子というよりまるで恋人へ己とあの男のどちらを選ぶのかと迫る如し、ねちねちとしつこく、無理矢理にでも自分を選ばせる構造になっている。さらに元妻への恨みなど、呉楚帆の偏執狂的演技も出色。白燕演じる身勝手で勝ち気な母親の元夫への憐憫、再婚相手への手厳しい対応、娘への愛の演じ分けも的確。そしてこれらを推理仕立てで作ったところが面白い。
監督の李鐵の作品は3本ほどしか見たことがない。フィルムが散逸したものも多いようだが、機会があれば、今後も注意して見ていこう。 
2011.1.29@香港電影資料館(館蔵精選)


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