《阿嫂》大陸上映へ

最も将来性があると思われる香港の新人映画監督・黄精甫(ウォン・チェンポー/ウォン・ジンポー)はようやく大陸の扉をあけることが出来た。黄精甫の新作《阿嫂》(大陸題《阿嫂傳奇》)は、ついに電影局の審査を通過した。この映画は、電影局の許可がおりなかった前作《江湖(ベルベット・レイン)》の後、再び黄精甫と曾志偉(エリック・ツァン)が手を組んだ作品で、2人はそろって上海にやってきた。
黄精甫監督の作品が大陸で上映されるにいたるまで、紆余曲折があった。《阿嫂》が電影局の審査を通過し、黄精甫はほっとし喜んでいる。大陸の配給会社は新しいものには厳しいが、ついに許可をとることができた。関係者は記者に「《江湖》のことがあるので、黄精甫に対して偏見をもたれるのではと心配し、電影局への申請には特に緊張した」と話した。電影局での審査では、審査員はこの映画はなかなかよいと判断し、《阿嫂》は大幅な編集やカットを免れた。
「この映画は人と人との感情を描いたもの。私たちはこのストーリーの中でひとりの導き手を作りだしていく。その導き手がこの映画の主演女優である。彼女はひとりの少女。私たちはたくさんの色を使って、カラフルな世界を作り、まるで太陽が一つの花園の上にあるように、この世の中には一つの暗闇もないと人々に感じさせる。そして一つの物語が語られてゆく。一人の子供が、大人の世界に放り込まれるのを見ることになるだろう」と黄精甫はインタビューを受け、《阿嫂》は狼の群れの中の小羊の物語り。優しい感情がこもっているとも話した。
曾志偉は、黄精甫を応援しており、《江湖》に続いて《阿嫂》では役者として出演、上海にプロモーションにやってきた。黄精甫の新作への曾志偉の評価は、「《江湖》を見て《阿嫂》を見ると、黄精甫を理解できるだろう。こういう種類の映画の表現方法は、新人類のある一面を見せてくれるもので、この映画もその一つだ。しかし撮影はなかなか難しかった」と話した。
曾志偉、黄秋生(アンソニー・ウォン)、任達華(サイモン・ヤム)、方中信(アレックス・フォン)、劉[火華](リュウ・イエ)、元華(ユン・ワー)ら6大影帝と林嘉欣(カレーナ・ラム)、新人・劉心悠(アニー・リウ)という豪華キャストによる《阿嫂》は8月4日大陸で上映になる。by 2005.7.24「上海青年報」

《江湖》のときは、許可するという口約束が、ふたをあければ、許可されなかったと聞いている。脚本の段階ではOK、しかしフィルムを見せたらダメだった。どこがどうダメなのかは不明。その不透明さが香港の映画人を困らせた。
いまほとんどの香港映画が実は大陸の映画会社(スタジオ)との合作という形(形だけ)を取っている。こうすることによって、大陸での上映許可を取りやすくしているわけだ。《江湖》の時にはまだ、合作映画として申請する条件(大陸と香港の人員の割合などの条件)が厳しかった。《江湖》は合作とせず上映許可を取ろうとしたのだが、それが上手く行かなかった。その後、合作映画としての申請条件が緩くなったため、いまはほとんどの映画が大陸との合作という形になっている。条件が緩和されたことで、合作しても香港映画のスタイルを無くさずにすむようになったからだ。《阿嫂》がこの辺はどうなっているのか不明だが、状況は刻一刻と変わっているだろうし、前回の轍を踏まないように気をつけ、大陸の俳優も使っているわけだから、必然的に前作よりは許可は取りやすかったのかもしれない。
香港映画における大陸俳優の起用は、合作のための(大陸での上映許可を取りやすくするため)もあるだろうが、それが映画に新鮮味を与えることになれば、一石二鳥だろう。