半邊人

《半邊人》許素瑩、王正方、許培、邱蓮心 
方育平(アレン・フォン):監督 1983年 VCD


電影評論學會之友の集い。先だっての徐克《第一類型危機(ミッドナイト・エンジェル/暴力の掟)》(id:hkcl:20070223#p1)に続き、新浪潮の作品。
家業の魚屋を手伝う阿[瑩の生活は、少々閉塞ぎみ。魚屋であることも、家族7人が狭い部屋に寝起きしていることも、彼氏がどうやら彼女とは分かれたいと思っていることも、何もかもが息詰まる状態。ある日、パートを探して見つけた香港影視文化中心というところへ行くと、パートはすでにいっぱいだが、無料で講座を受講できる仕事が残っているといわれ、働くことにし、俳優養成講座を受講することにした。やってきた講師は、アメリカ帰りの華僑で脚本家、足が少し悪い。講座を受講するうちに、次第に彼女は閉塞から解放されていく。また講師の張との間には微妙な関係が生まれていく。


東京のウチにVCDがあったような気がするが、いまひとつ見ようという気になれずほったらかしにしていて、いままで見ていなかった。これが大変に面白かった。俳優たちはみな素人だが、自分の本来のすがたに近い役を与えられているそうだ。これがうまく機能していてセミドキュメンタリー風に仕上がっている。出てくる風景、家族構成や家の状態(団地住まいで、2戸を1家で使っているが、兄夫婦は1戸を占領し、残った兄弟姉妹5人と両親が狭い部屋で寝ている)、など香港の土着的な画面があふれている。バンドをやっている主人公の彼氏の話しや、姉が結婚まえに妊娠してしまったり、恋人たちは離島にキャンプに出かけたりと、若者たちの生態もかいま見える。
いまとなっては、こういう香港はすでに見られず、10代の子には、香港を知るための歴史的な映画になってしまっているかもしれないという。
タイトルの「半邊人」は、半分は魚屋で半分は役者の主人公のこと。


新浪潮というのは、1970年代から80年ごろ香港映画に起こったひとつのブームで、徐克(ツイ・ハーク)(《蝶変》)、許鞍華(アン・ホイ)(《瘋劫》《胡越的故事》《投奔怒海》など)、譚家明(パトリック・タム)(《烈火青春》《愛殺》など)、方育平(アレン・フォン)(《半邊人》《父子情》など)などが含まれる。これらの監督の多くは外国で勉強し、香港のテレビ局勤務を経て映画監督になっている。
日本では「香港ニューシネマフェス」(89年)で譚家明《烈火青春》、許鞍華《撞到正》などが上映されているし、方育平《美國心》、舒琪《老娘夠騒(ソウル)》あたりもどこかで見たような気がする(池袋西武にあったstudio 200かな)。いま見るととても興味深いので、今年はこのあたりを見直してみるのもいいかも。しかしほとんどがVCDのみの発売なうえ、いまとなっては探すのもかなり困難なようだ。


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